- 故人の希望だった海洋散骨をしてあげたい。
- お墓はいらないから海洋散骨でいい。
- 自分も海洋散骨にするから調べておきたい。
- 海洋散骨って法的に問題はないの?
ここ数年で希望者が急増している『海洋散骨』。
大切な人の遺骨を【土の中】ではなく、多くの生命を生み出した【海の中】に帰してあげたいと考える人が『海洋散骨』を選んでいます。
しかし、『海洋散骨』には魅力的なメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあるので注意が必要です。
そのためには、まず『海洋散骨』の全容を理解しておきましょう。
この記事では、
- 海洋散骨とは何か
- 海洋散骨は法的にどう扱われるのか
- 海洋散骨のメリットとデメリット
- 海洋散骨をする場合の流れや費用
について解説しています。
『海洋散骨』に関する一通りの情報が得られますので最後まで読んでみてください。
安心して海洋散骨をするために本記事で予習をしておいてください。
海洋散骨とは
人が亡くなると、故人の遺骨を《お墓》や《納骨堂》などに納骨するのが一般的です。
しかし、近年ではお墓や納骨堂に納めるのではなく、遺骨を【海】にまいてしまう『海洋散骨』という新しい葬送形態があります。
遺骨を海にまくといっても、どこかの砂浜や岸壁からまくのではなく、ちゃんと沖合まで専用の船を出して慎ましやかに遺骨をまきます。
また、遺骨は骨壺から出してそのまま海にまくのではなく、人が見てもそれが遺骨だと分からない程度まで【粉骨】をしてから海にまくのが原則です。
海は多くの生命を誕生させており、そんな【生命の母】である海に故人を帰してあげるのが海洋散骨です。
とはいえ、海洋散骨はまだ新しい葬送形態なので、人によっては理解されないこともあり、親戚などから反感を買ってしまうことも多いんですよね。
ですから、海洋散骨をするには、まず家族でよく話し合い、それから親戚にも説明できるようにしておきましょう。
とはいえ、ほとんどの生き物は自然から生まれて自然に帰り、わざわざお墓を作って遺骨を納めているのは人間だけです。
そういう意味では海洋散骨のように遺骨を自然に帰すのが本来のあり方なのかもしれませんね。
海洋散骨は違法ではないの?
最近では『海洋散骨』を希望する人が急増していますが、その中でも「遺骨を海にまくのは違法なのでは?」と心配する人も多いです。
いくら故人の強い希望でも、それが違法であれば諦めるしかありません。
はたして『海洋散骨』は法的に認められているのでしょうか?
海洋散骨は違法ではない
遺骨を海にまいても大丈夫?もしかして違法なの?
一般的に、遺骨というのは『お墓や納骨堂に納めるもの』と考えられていますが、『海洋散骨』ではそれをせずに海へまくわけですから、いろいろと不安になって当たり前です。
では、先に結論を言いますと、現在のところ海洋散骨は違法ではないので安心してください。
じつは『散骨』に関する詳細な法律がまだないのです。
遺骨の扱いについては【刑法第190条(死体損壊罪等)】で決められており、
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
《参照》:刑法第190条
となっています。
要するに遺骨というのは、
- 勝手に壊すのはダメ
- 勝手に捨てる(放置)するのはダメ
- 勝手に自分あるいは第三者のものにする(占有する)のはダメ
ということなんですよね。
じゃあ、粉骨は損壊、散骨は遺棄にならないの?
社会通念上問題があるような損壊・遺棄・領得はダメだという意味なので、粉骨や散骨なら大丈夫ですよ。
粉骨や散骨は、社会的な習慣や宗教観からは外れておらず、節度をもって常識的な範囲で行うなら問題はありません。
そして、遺骨の埋葬については【墓地、埋葬等に関する法律】(※略して【墓埋法】)という法律があるんですよね。
墓埋法の第4条1項では、
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
《参照》:墓地、埋葬等に関する法律 第4条1項
と定められており、遺骨は墓地以外の場所に埋葬できません。
墓地というのは、お墓や納骨堂を設けるために自治体から許可を受けた区域のことをいいます。
えっ、海は墓地じゃないから違法なんじゃ?
現在のところ海に散骨することを規制されていないので問題はありませんよ。
墓埋法で規制の対象となっているのは、あくまで《埋葬》と《焼骨の埋蔵》であって、《散骨》については墓埋法の対象ではないんです。
つまり、『遺骨を埋める』場合は許可された区域でないとダメ、でも『遺骨をまく』場合は明確な決まりがない、ということです。
この【墓埋法】が制定された当時は、まさか遺骨を海にまくなんて思わなかったんでしょうね。
だからといって、それに対応すべく【墓埋法】の内容が改定されたわけでもなく、現時点では『遺骨をまく』ことに関して国は何も変えるつもりはないみたいですね。
ということで、『遺骨をまく』ことに関する決まりはないので罰則もありません。
ただし、いくら決まりがないとはいえ、社会的な習慣や宗教観から外れず、節度をもって常識的な範囲で行うというのが前提であることには変わりません。
また、埋葬や散骨のような【故人を弔う方法】は地域によって違うため、散骨についても自治体によって条例に違いがあります。
以前は散骨ができた地域でも現在はどうなっているか分かりませんので、散骨をするときには必ず自治体に確認をしましょう。
《関連記事》:海洋散骨は違法じゃない。散骨のルールや自治体の条例を紹介
トラブル回避!海洋散骨のマナー
海洋散骨をすることは法的に問題はありません。
だからといって何でもアリというわけではなく、海洋散骨にあたり最低限のマナーがあります。
遺骨はしっかりと粉砕する
まず1つ目の最低限のマナーがあります。
それは、遺骨はしっかりと粉砕するということです。
いくら広大な海にまくからといって、骨壺から出した遺骨をそのままの状態でまいてはいけません。
海にまくときは、それが遺骨だと分からない程度には細かく砕かないとダメです。
これは、周辺に住んでいる人たちや周囲への環境に対する最低限のマナーです。
遺骨だと分からないくらいって、具体的にはどのくらいの大きさ?
日本では2mm以下まで砕くのが目安で、欧米諸国でも同じく2mm以下がルールです。
骨を2mm以下まで砕くのはかなり大変なので、自分で粉骨をするのはヤメておきましょう。
ちなみに、海洋散骨の業者の多くは、遺骨を【パウダー状】になるまで粉砕しています。
あなたは自分の家族の遺骨を《2mm以下》あるいは《パウダー状》になるまで細かく粉砕できますか?
きっと、気が引けてしまって、そこまで細かく粉砕できないのではないかと思います。
しかも、お骨は十分に乾燥させないとカビが生えてしまうんですよね。
しっかりとお骨を砕いて適切に保管するなんて素人にはできませんから、遺骨の粉砕はちゃんと専門の業者へ依頼した方が無難です。
勝手に自分で海洋散骨をしない
続いて、2つ目の最低限のマナー。
それは、勝手に自分で海洋散骨をしないということです。
海というのは、誰でも、いつでも、どこからでも、入ろうと思えば自由に入れます。
しかし、だからといって【最寄りの海】や【思い出の海】で勝手に遺骨をまくとトラブルを招く可能性があります。
まず、海洋散骨をする場所にはマナーがあり、
- 陸から【1,852m】以上離れた海洋上
- 漁場ではない場所
- 人目につかない場所
- 航路ではない場所
ということになっています。
となると、どこかの砂浜や海岸などで勝手に自分で散骨をするのはNGなんですよね。
じゃあ、とにかく船に乗って沖合に出れば散骨できるの?
じつは、散骨するときの船にもマナーがあるんです。
船に乗るといっても、ちゃんと【海洋散骨をするための船】を出す必要があって、
- フェリー
- 遊覧船
- 交通船
- 漁船
での散骨はマナー違反です。
このように、海洋散骨をする場所や船にもマナーがあるので、自分の好きなように散骨するというわけにはいきません。
海洋散骨をする場合は勝手に自分で散骨をせず、ちゃんと専門業者に依頼しましょう。
海洋散骨のメリットとデメリット
海洋散骨は新しい葬送形態として多くの人の注目を集めています。
海洋散骨には魅力的なメリットがありますが、一方で注意するべきデメリットもあります。
散骨してから後悔をしないように、事前に家族でよく話し合ってから申込みをしてください。
海洋散骨のメリット
海洋散骨のメリットは、
- 故人の希望に添える
- お墓を建てる必要がなく、費用を大幅に削減できる
- 次の世代の人たちが安心できる
- 地球環境にやさしい
などです。
近年では「自分の遺骨は海にまいてほしい。」という人が急増しており、海洋散骨ならそのような人の希望に添うことができます。
また、遺骨のすべてを散骨すれば【お墓】が不要となり、お墓の購入費用やその後の維持費などがかかりません。
お墓に関する費用というのはトータルすると数百万円程度かかるので、それが無くなるのは家族にとって非常に大きなメリットです。
しかも、お墓が不要となれば『お墓の継承者』も不要ですから、次の世代の人たちにとってはお墓を継がなくてもいいので安心です。
さらに、お墓を1つ建てずにすむということは、それだけ石材を使用せずにすみ、それは地球環境の保全にも繋がります。
このように、海洋散骨にはいろんなメリットがあるので希望者が急増しているのです。
海洋散骨のデメリット
海洋散骨には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意するべきデメリットもあります。
デメリットの部分もちゃんと理解した上で、海洋散骨にするかどうかを慎重に決めましょう。
海洋散骨のデメリットは、
- 海にまいてしまうと遺骨は二度と戻らない
- 天候によっては散骨の日程が変わってしまう
- 散骨代行の場合、どのように散骨されたか分からない
- 親戚からクレームがくる
- 海洋散骨にお坊さんは同行しない
などがあります。
海洋散骨の最大のデメリットは『海にまいてしまうと遺骨は二度と戻らない』ということなので、家族と十分に話し合ってから散骨しましょう。
また、散骨をする当日が悪天候である場合、船を出すことができないため日程の延期を余儀なくされるケースもあります。
だからといって、業者に散骨代行を依頼すると、散骨の様子を自分の目で見ることができないので、それはそれで心配ですよね。
しかも、散骨して遺骨がなくなってしまうと親戚から文句を言われることもありますので、故人と関係の近い親戚には事前に報告しておくようにしましょう。
さらに、遺骨を《お墓》や《納骨堂》に納めるときにはお坊さん立ち会って供養をしてくれますが、海洋散骨の場合は基本的にお坊さんは同行しないので、供養は一切されません。
海洋散骨は魅力的なメリットばかりが注目されがちですが、その裏にある重要なデメリットにもちゃんと目を向けて、後悔のないよう家族とよく話し合いましょう。
海洋散骨は誰に依頼すればいいの?
海洋散骨は専門の業者に依頼した方が、しっかりと丁寧な散骨ができますし、結果的に費用の面でも安く抑えられます。
ですから、海洋散骨は、
- 散骨業者
- 散骨サービスのある葬儀社
のどちらかに依頼しましょう。
散骨業者に依頼する
海洋散骨をするなら、専門の知識や技術を持っている散骨業者に依頼をするのがおすすめです。
海洋散骨には、
- 個別(貸切)散骨
- 合同散骨
- 委託散骨
などの散骨プランがあり、それぞれにいろんなオプションも用意されています。
散骨プランやオプションは業者によって違いますので注意をしてください。
いくつかのプランやオプションの中から、故人やあなたが希望するものを選び、心を込めて散骨してあげましょう。
ちなみに、散骨業者を選ぶときは複数社から資料や見積もりを取っておくといいですよ。
最近では、お葬式やお墓のことなど【自分自身や家族の死後】を想定して生前相談をしておくのが当たり前です。
何でも『備えあれば憂いなし』ですから、今からよく調べて比較検討しておくことをおすすめします。
散骨サービスのある葬儀社に依頼する
海洋散骨は散骨業者以外にも、散骨サービスのある葬儀社に依頼することもできます。
そのような葬儀社も当然ながら海洋散骨についての専門の知識や技術がありますので安心です。
とはいえ、散骨サービスのある葬儀社は専門業者と提携をしているので、結局のところ散骨業者に依頼するのと変わりません。
あなたが今どこかの葬儀社の会員などになっていたら、海洋散骨サービスがあるか一度確認をしてみてください。
海洋散骨の費用はどのくらい?
海洋散骨は、お墓や納骨堂を利用することに比べれば圧倒的に費用を抑えられます。
海洋散骨の費用は、だいたい5万円〜50万円くらいです。
えっ、そんなに金額の幅があるの?
これほど金額の幅が出ているのは、海洋散骨にはいろんなプランがあるからです。
大まかな目安でいうと、
- 『委託散骨』⇒5万円~10万円
- 『合同散骨』⇒10万円~20万円
- 『個別(貸切)散骨』⇒20万円~30万円
- 『ヘリ・セスナ機チャーター散骨』⇒40万円~50万円
のようにプランによって費用が全然違います。
散骨を業者へ全面的に任せてしまう『委託散骨』の場合は【5万円~10万円】くらいなので、費用をかなり抑えられるでしょう。
何組か合同で散骨を行う『合同散骨』の場合は、複数組のために船を出すことになり、また散骨時の献花の料金もかかるので、だいたい【10万円~20万円】くらいです。ただし、合同散骨ができない散骨業者は多いので、事前によく確認をしてください。
『個別(貸切)散骨』の場合は、一組のために専用の船を出し、散骨時の献花の料金もかかるので、だいたい【20万円~30万円】くらいでしょう。
さらに、海洋散骨はセスナ機やヘリをチャーターして行うこともあり、その場合は【40万円~50万円】くらいが必要です。
もちろん、散骨業者によってはさらに安いケース、あるいは逆にもっと高額になるケースもあります。
選ぶプランによって費用が全然違いますが、故人や家族の希望に合わせて、どんな海洋散骨なら満足できるかをよく考えましょう。
改めて言いますが、一般的なお墓を建てるまでの費用は、総額で【130万円~350万円】くらいは必要です。
一方で、海洋散骨にすれば、新しくお墓を建てる場合の《4分の1》あるいは《5分の1》くらいの金額で抑えられます。
このように、海洋散骨は費用面で圧倒的なメリットがあるので多くの人から注目を集めているわけですね。
海洋散骨をする前の流れ
海洋散骨をするには、散骨業者や葬儀社に依頼しなくてはいけません。
ここからは、海洋散骨をする前の流れについて一通り紹介していきます。
まずは家族でよく話し合う
海洋散骨をするまでの手順としては、どんな海洋散骨にするかを家族でよく話し合うことから始まります。
まずは、根本的なところですが本当に海洋散骨をするのかどうかを話し合いましょう。
あなたは海洋散骨をするつもりでも家族は知らない、なんてことがないようにしてくださいね。
散骨というのは家族が納得していないと、いざ散骨する時にトラブルが起きることもあるのです。
次に、遺骨を全部まいてしまうのか、それとも一部だけ残しておくのかを決めておきましょう。
遺骨の一部だけ残すのであれば、残した遺骨をどのように誰が守っていくのかも決める必要があります。
ちなみに、少量の遺骨であれば、お墓や納骨堂に納めるのではなく、自宅に遺骨を保管する『手元供養』にする人も多いですよ。
《関連記事》:分骨をしたい人は必見!『手元供養は良くないの?』の疑問を解消します
事前相談
散骨業者や葬儀社では、海洋散骨について事前相談ができます。
事前に複数社で相談をし、どのような内容で相場の金額がいくらなのかを知っておくことが望ましいです。
事前相談では、
- 委託、合同、個別、どの散骨プランにするのか
- 遺骨は【全部まく】のか【一部だけ残す】のか
- 必要な書類は何なのか
など、主要なところを確認した上で詳しい説明を受けてください。
複数社に事前相談をするのはけっこう大変なので、面倒くさがって1社だけしか説明を聞かない人もいますが、できれば3社くらいは頑張って相談をしてみてください。
海に散骨したらもうやり直しはできませんので、散骨業者選びは時間がかかっても慎重に行うべきですよ。
どうしても事前相談に行く時間がない場合は、複数社に資料請求をして比較検討くらいはしておきましょう。
また、希望に合った業者があれば、先に『生前申込の手順』を確認しておくのもいいですね。
海洋散骨を望む人の多くは、『自分の死後のことで家族に迷惑をかけたくない』と強く思っています。
だとしたら、あなたが先に生前申込を済ませておいて、いざというときに家族に迷惑をかけないようにしてあげましょう。
本申し込み
海洋散骨をする業者が決まったら、本申し込みをしましょう。
本申し込みをするときには、提出する書類がいくつかあり、
- 業者所定の申込書(海洋散骨依頼書)
- 同意書
- 火葬許可証あるいは改葬許可証
- 施主の身分証明書のコピー
などの書類が必要です。
このとき、火葬の後どこにも納骨をしていない場合は『火葬許可証』を提出し、一度どこかに納骨していた遺骨の場合は『改葬許可証』を提出するので、この点は注意をしてください。
『火葬許可証』は火葬をする際に役所から発行されて、遺骨とともに喪主に渡されているはずです。
『改葬許可証』は、現在納骨されている墓地の管理者から《納骨証明書(または分骨証明書)》を発行してもらい、それを現在納骨されている墓地がある市町村の役所へ提出して手続きをすれば発行されます。
そして、申込書に記入する内容は、どこの業者もだいたい同じで、
- 散骨の希望日時
- 遺骨の状態の確認
- 遺骨をどのようにして業者へ預けるのか
- 合同や個別の場合、乗船人数は何人なのか
- 合同や個別の場合、献花をするのかどうか
- 施主に骨壺の返却をするのかどうか
- 散骨時の写真撮影をするのかどうか
- 散骨証明書は出してもらうのか
- 費用の支払い方法
についてです。
この中で、少し分かりにくいのが『遺骨の状態の確認』という部分ですよね。
『遺骨の状態の確認』というのは、散骨する予定の遺骨が、
- 火葬後どこにも納骨されていない状態
- 一度お墓に納骨され、それを取り出した状態
- すでに粉骨されている状態
上記のどれに該当するかを確認することです。
遺骨がどこにも納骨されていないままであれば、業者に預けて粉骨してもらう必要があります。
長年お墓に納骨されていた場合、骨壺の中の遺骨が汚れていることがあるので、簡単な洗浄などをしてから粉骨した方がいいですね。
すでに粉骨がされている状態であれば業者へ支払う粉骨費用が不要です。
なお、業者によっては他にも本申込み時に必要なものがあるかもしれませんので、確認をしてみてください。
遺骨の持ち込み・引き取り・郵送
海洋散骨をするためには、遺骨を細かく粉砕(2mm以下)しなくてはいけません。
骨壺から出した遺骨をそのまま海へまくのは重大なマナー違反ですし、どんな海洋散骨業者でもそれは認めてくれません。
しかし、自分で家族の遺骨を粉砕できる人は少ないので、粉砕作業については業者にやってもらいましょう。
では、粉砕してもらうために遺骨をどのように業者へ預けるのか?
遺骨を預ける方法は、
- 持ち込み
- 引き取り
- 郵送
の3つです。
散骨業者があなたの家から近い場所にあれば、あなたが自分で遺骨を持ち込んでもOKです。
その方が余計な引取出張費も請求されず、しかも確実に届けられるので安心です。
しかし、散骨業者へ持ち込む時間がない場合、費用は多少かかると思いますが、散骨業者に頼んで遺骨を引き取りに来てもらいましょう。
また、散骨業者が自宅から遠く、遺骨をあなたが持って行くのも散骨業者に引き取りに来てもらうのも、いずれも難しいですが、その場合は遺骨を郵送するしかありません。
最近では、遺骨を専用の『送骨キット』か、あるいは『ゆうパック』でも送ることができます。
持ち込み、引き取り、郵送、この3つからあなたの都合のよい方法で遺骨を散骨業者へ預けてください。
粉骨作業
粉骨作業は自分でせずに、ちゃんと業者に依頼をしましょう。
自分でしてあげたいと思うかもしれませんが、遺骨を細かく砕く作業は普通の人では大変ですし、精神的にも大きな負担になってしまうものです。
散骨業者では基本的に機械を使って細かく粉砕します。
人の手で粉砕する業者もありますが、多くの業者は機械を使用して、人骨だと分からないように確実に細かく粉砕しています。
細かく粉砕した遺骨は水溶性の骨袋へ入れられ、散骨の当日まで保管されます。
また、業者によっては粉骨をするときに遺骨を洗ってくれるところもありますよ。
じつは、遺骨というのは保管状態によっては汚れていたりするんです。
火葬の後からずっと自宅で保管されていれば、骨壺の中の遺骨が汚れることなく乾燥もしているので大丈夫ですが、問題なのはお墓から取り出した遺骨。
僕も何度も見ていますが、お墓から取り出した骨壺の中というのは湿っていますし意外に汚れています。
骨壺の中の遺骨が土で汚れていたり、場合によっては虫の死骸なんかもあるのです。
それをそのまま粉砕するのは故人に対して失礼なので、先に『お骨洗い』をしてから粉骨してくれます。
ただし、この『お骨洗い』は有料オプションであることが多いので注意をしてください。
海洋散骨の当日の流れ
散骨業者に遺骨を預け、しっかりと粉骨をしてもらったら、あとは申し込んでおいた日時に海へ散骨するだけです。
ここからは、海洋散骨の当日の流れについて紹介します。
散骨を業者に委託している場合
散骨業者に散骨を委託している場合は、申し込みのときに指定した日に散骨をしてくれます。
散骨をした後は、海のどのあたりで何時ごろに散骨したかが分かるような『散骨証明書』が発行され、後日に郵送されてきます。
また、散骨時の様子が撮影された写真や画像を送ってもらうことも可能です。
同行する場合
海洋散骨に家族が同行する場合は、予約をした日に散骨業者スタッフと一緒に海へ出て自身で散骨をします。
全体の流れは、
- 出航場所に集合
- 沖に出て散骨式
- 献花・献酒・黙祷
- 散骨した辺りを周回する
- 帰港
- 散骨証明書や記念写真を受け取る
といった具合です。
いよいよ故人の遺骨が自然に帰るので、冥福を祈り心を込めて散骨してあげましょう。
①出航場所に集合
まず、散骨の当日になったら、散骨する海域から最寄りの港に集合します。
ここで散骨業者スタッフと待ち合わせをしますので、出航時間に遅れないように注意してください。
また、合同散骨の場合は他の家の人たちもいますから、絶対に遅刻することのないよう時間に余裕をもって家を出てください。
②散骨海域まで移動して散骨式
参加者がみんな揃ったら出航し、散骨海域まで移動します。
散骨海域に到着したら、そこでいよいよ散骨です。
同乗スタッフの指示に従って、遺骨を大海原に帰してあげましょう。
散骨する時には、
- 遺骨をそのまま帰す
- 遺骨を水溶性の骨袋に入れた状態で帰す
- 遺骨を水溶性の特別な入れ物に入れた状態で帰す
という3つの方法があります。
どの方法でも構いませんが、合同散骨の場合は、遺骨をそのまま帰すなら1番風下で散骨してくださいね。
風上でやってしまうと、風に舞った遺骨が他の人にかかってしまいますので十分に注意しましょう。
《関連記事》:海洋散骨は【船酔い】が心配。酔わないための効果的な対処法16選
③献花・献酒・黙祷
遺骨を海に帰したら、そこへ献花、献酒をし、最後に故人の冥福を祈って黙祷を捧げます。
黙祷をするときには、もしも仏式で故人のお葬式をしていた場合は、数珠を持参して合掌してあげるとより丁寧ですね。
申し込みのときに写真撮影を依頼しておけば、散骨の様子を撮ってくれて、後で写真をもらうことができます。
④散骨した辺りを周回する
散骨をしたら、すぐに帰港するのではなく、しばらくの間その辺りを周回して遺骨とお別れをします。
海洋散骨をした場合、お墓参りのように『散骨をした現場を再訪する』なんていうことはそう簡単にはできません。
多くの人にとってはそこへ行くのは最初で最後です。
ですから、周回しているときは、自分でその場の写真を撮るなどしてしっかりと記録を残しておきましょう。
⑤帰港
海上でのセレモニーが一通り終わったら、その後は帰港します。
名残惜しみつつ、散骨した海の景色をしっかりと目に焼き付けておきましょう。
帰港したら、そのまま現地にて解散をします。
⑥散骨証明書や記念写真を受けとる
散骨をした数日後に、散骨業者から『散骨証明書』が郵送されてきます。
『散骨証明書』というのは、その名のとおり散骨をしたことを証明する文書です。
とはいえ、これは公的なものではなく役所への提出義務もありません。
しかし、『散骨証明書』があることで、その家の後代の人が見て「あぁ、この人は海洋散骨をしたんだな。」ということが分かりますので大切に保管をしておきましょう。
また、申し込みのときに写真撮影を依頼していれば、散骨時の様子を撮った写真やデジタル画像が一緒に送られてきますので、こちらも記念にとっておきましょう。
《関連記事》:海洋散骨証明書は何に使うの?役割や記載内容などを詳しく紹介
散骨に同行する際の服装
海洋散骨をするにあたり【当日の服装】で悩む人が多いです。
一般的に遺骨をお墓へ納めるときには供養をしますので、参列者はみんな喪服を着用します。
じゃあ、海洋散骨をするときも同じように喪服を着用をするべきなのでしょうか?
海洋散骨のときには服装に決まりはありませんので、喪服を着用しなくてもいいと思いますよ。
その理由は、
- 動きにくい
- 周辺の人に【散骨すること】が分かってしまう
- 海洋散骨は『自由』な葬送形態である
からです。
動きにくい
喪服というのはフォーマルな服装です。
フォーマルな服装って、けっこう動きにくいんですよね。
海洋散骨で使用される船はフェリーのように大きなものではありませんので、波のうねりをモロに受けてしまいます。
そんなときに動きにくい服装をしていると、とっさの行動ができずケガをしてしまうかもしれません。
海洋散骨をするときは、安全面を考えて喪服ではなく【動きやすい服装】にしましょう。
周辺の人に【散骨すること】がすぐに分かってしまう
海に遺骨をまくときには、周辺の人たちが不快な思いをしないように十分注意しなくてはいけません。
ですから、できるだけ《今から散骨をしに行く》ということが分かりにくいようにする必要があります。
でも、喪服を着た人が船に乗っていれば、周辺の人に【散骨すること】がすぐに分かってしまいますよね。
海洋散骨のマナーという観点においても喪服の着用はしない方がいいでしょう。
海洋散骨は『自由』な葬送形態である
喪服を着ることには『故人を偲ぶ』という意味が込められています。
しかし、仏事で喪服を着るのはあくまで【慣習】であり、強制されたり法的な義務があるわけでもないです。
海洋散骨は『自由』な葬送形態だからこそ人気があるので、服装も自由でいいんです。
もちろん、《喪服を着る自由》というのもあるんですけどね。
とはいえ、合同散骨の場合は、同乗者に喪服を着ている人がいたら「あっ、やっぱり喪服を着た方がよかったのかな?」って心配になる人もいます。
合同散骨をするときには、他の同乗者への配慮というのも必要です。
それに、やはり【動きやすさ】と【周辺の人たちに対するマナー】を考えれば、喪服ではない方がいいでしょうね。
まとめ
近年では『海洋散骨』の希望者が急増しています。
海洋散骨は、
- お墓を持つことの継続的な負担がない
- お墓の継承者の問題を解消できる
- 故人の希望に沿うことができる
という点で多くの人の注目を集めています。
また、『海洋散骨』については、現在のところ法的な規制や罰則はありませんので、今後も希望者は増えることでしょう。
しかし、『海洋散骨』はまだ新しい葬送形態であり、遺骨を全部まいてしまうと二度と戻ってきません。
トラブルを避けるためにも、家族や親戚と十分な話し合いをしてから『海洋散骨』を行うようにしましょう。