- みんなはなぜ海洋散骨をしているんだろう?
- 海洋散骨をしたいけど、やっぱり少し心配だ。
- 後悔のないよう、納得をして海洋散骨したい。
近年では海洋散骨への注目が集まっており、その実施数もどんどん増えています。
しかし、海洋散骨に興味はあっても「やっぱり遺骨を海にまいてしまうのは不安だ。」という人も多いです。
海洋散骨には【お墓を建てる必要がない】という大きなメリットがある一方で【遺骨を海にまくと二度と戻ってこない】という大きなデメリットもあります。
後悔のない海洋散骨をするためにはメリットとデメリットをしっかりと理解しておくことが大事です。
そこで、この記事では僧侶の私が『海洋散骨のメリットとデメリット』について詳しく解説しています。
海洋散骨をするかどうかの判断材料となる大事な内容なので、ぜひ最後まで読んでみてください。
特にデメリットの部分はちゃんと読んでおいてくださいね。
海洋散骨をするメリット
海洋散骨が多くの人から注目されるのは魅力的なメリットがあるからです。
海洋散骨のメリットは以下のようなことが挙げられます。
- 故人の希望に添える
- お墓を建てる必要がない
- 次の世代の人たちが安心できる
- 地球環境にやさしい
それぞれ詳しく解説していきます。
故人の希望に添える
海洋散骨には、ある程度なら故人の希望に添えるというメリットがあります。
海洋散骨が人気を集めているのは、『自分の遺骨を自然に帰してほしい』と考える人が多い証拠です。
生き物というのは、自然から生まれて、いずれは自然に帰るもの。
だから、『自分の遺骨は、どこかへ安置をせず、他の生き物と同じように自然に帰してほしい。』と願うわけですね。
海洋散骨であれば、遺骨を大自然に帰すことができます。
また、海洋散骨を希望する理由として、
私は『閉所恐怖症』だから、狭くて暗いお墓には入りたくないんです。
という人もいました。
なるほど、たしかにお墓や納骨堂の中は狭くて暗いですから、『閉所恐怖症』の人にとって広くて明るい海に散骨してほしいんですね。
今までは、『遺骨はどこかに納めるもの』という考え方でしたが、近年ではそれが徐々に変わり始め、遺骨をどうするかを自由に選択できるようになってきました。
故人の希望を尊重してあげられるのが海洋散骨のメリットです。
お墓を建てる必要がない
一般的に、亡くなった人の遺骨は『お墓』へ納骨しますが、近年では【お墓を持つこと】に負担を感じる人が増えています。
しかし、海洋散骨をすればお墓を建てる必要がありません。
この『お墓を建てる必要がない』というのが海洋散骨の大きなメリットです。
お墓を建てる費用がかからない
一般的には、はじめて家族が亡くなると『お墓』を建てます。
お墓を建てるには大きなお金が必要です。
今まで私が見てきた限り、一般的なお墓を建てるまでの費用は、
- 墓地(土地)の使用料が、30万円~150万円くらい
- 墓石の代金が、100万円~200万円くらい
ですから、上記の2つを合計すると、お墓を建てる費用として【130万円~350万円】くらいは必要となります。
しかし、遺骨をすべて海洋散骨すればお墓が不要となるため、お墓を建てる費用がかからないんですよね。
家族にとっては【130万円~350万円】の出費がなくなるので非常に助かります。
数百万円の節約というのはかなり大きなメリットですよね。
お墓の維持費がかからない
遺骨のすべてを海洋散骨すれば、お墓は必要ありません。
となれば、当然ながらお墓の『維持費』もかかりません。
お墓を持っていると、
- お寺や霊園に支払う管理料
- 清掃など、自分で墓地の管理をする費用
- 行事などのお布施や寄進
などがあり、意外と多くの『維持費』が必要です。
しかも、維持費はお墓がある限り発生し続けます。
一方で、海洋散骨をすれば最初の費用は必要ですが、その後は何の維持費もありません。
長期的に見ても《海洋散骨をする場合》と《お墓に納骨する場合》とでは、維持費という点で非常に大きな差があります。
海洋散骨というのは費用面でとても優れた葬送形態なんですよね。
お墓参りの負担がない
海洋散骨にしてお墓を持たなければ、お墓の初期費用や維持費がないこと以外にもメリットがあります。
お墓を持たないということは、当然ながらお墓参りの負担がありません。
地味ですが、お墓参りの負担がないことはバカにできないメリットとなります。
お墓参りをするときには、
- お線香
- お花
- お供物
- 交通費
などが必要です。
これらの費用がお墓参りのたびにかかるので、経済的な負担となります。
また、お墓参りには経済的な負担だけでなく【自宅からお墓までの移動】や【墓地の掃除】など、体力的な負担もあります。
さらに言えば、お墓を持っていると、本当は面倒だったとしても『お墓参りをしなくちゃいけない』という気持ちになり、それが人によっては心理的な負担となるんですよね。
しかし、海洋散骨をすればお墓参りがないので、
- 経済的な負担
- 体力的な負担
- 心理的な負担
これらがすべて解消されます。
お墓参りの負担がなくなることは、地味ですが塵も積もれば大きなメリットとなります。
お墓の後継者の問題がない
お墓を持たないということは、お墓の後継者も必要ありません。
ですから、海洋散骨をしてお墓を持たなければ、多くの家で課題となっている『お墓の後継者の問題』がなくなるんですよね。
日本では昔から【お墓は代々にわたって受け継いでいくもの】という考え方があり、多くの人は頑張ってお墓を維持してきました。
ところが、昨今の少子高齢化や宗教離れにともない【お墓の後継者】が急激に減ってしまい、多くの家では『お墓の後継者の問題』で頭を悩ませているのです。
しかし、お墓があるから後継者の問題が出るわけで、散骨によって遺骨が残っていなければ、そもそもお墓が不要であり、同時にお墓の後継者問題もなくなります。
海洋散骨は、現代の日本人が抱えるお墓の問題を根本的に解消してくれるんです。
お墓の管理者がいなくなるリスクがない
お墓というのは、空いている土地ならどこにでも建てられるわけではなく、行政から《墓地として認可を受けた土地》にしかお墓を建てられません。
そして、墓地には基本的に管理者がいます。
管理者は、墓地全体や管理棟の掃除をしたり備品の管理をしますが、ごくまれに管理者が不在となることがあります。
管理者がいないと墓地全体が荒れてしまい、管理者不在が長く続けば最終的には墓地の使用者たちで管理をしなくてはいけません。
しかし、海洋散骨をすればお墓を持つ必要がないため『お墓の管理者がいなくなるリスク』がないのです。
お墓を持った後の《万が一のリスク》がないのも海洋散骨のメリットですね。
海がお墓の代わりになる
海洋散骨をすれば、お墓は必要ありません。
しかし、お墓がないと『お参りをする対象』がなくなるので、お墓の存在に慣れた私たちとしては何となく違和感があることでしょう。
そんなときは、最寄りの海へ行って、そこで故人を想いながら手を合わせてください。
遺骨を海にまいたということは、あらゆる海がお墓の代わりになると考えることができます。
地球上の海は繋がっていますから、世界中の海が故人にとってのお墓になるのが海洋散骨のメリットです。
どこかへ旅行をしたときなどに海があったら、海の近くで立ち止まり、そこで海に向かって手を合わせましょう。
波の音が《故人の声》のように聞こえるかもしれませんよ。
次の世代の人たちが安心できる
お墓はその家の人たちによって代々受け継いでいくものです。
しかし、次の世代の人たちにとっては【お墓を受け継いでいくこと】が大きな負担になります。
今の人たちは、お墓なんて継ぎたくない、立派なお墓なんて無い方がいいと思っているんです。
しかし、自分の代で途絶えさせてしまうことに申し訳なさを感じて、仕方なくお墓を継承しているんですよね。
ですから、あなたがお墓を持たなければ《お墓の継承者》も必要ないので、次の世代の人たちが安心できます。
あえてお墓を持たないことで、次の世代の人たちを安心させてあげられるのが海洋散骨のメリットです。
子供たちには自由に生きてほしいですよね。
地球環境にやさしい
お墓を作るためには、自然の岩を切り崩して石材を採掘し、それを墓石として加工しなければなりません。
石材の採掘をすることにより、少しずつとはいえ採掘場周辺の環境が変化していきます。
それがいろんな所で起これば、拡大解釈かもしれませんが【地球環境の変化】につながります。
しかし、海洋散骨すればお墓を建てずにすむので、それだけ地球環境にやさしいといえます。
海洋散骨のデメリット
海洋散骨には魅力的なメリットがありますが、一方で注意するべきデメリットもあります。
海洋散骨のデメリットには以下のようなことがあります。
- 家族の遺骨を砕く必要がある
- 海にまくと遺骨は二度と戻らない
- 天候によって散骨の日程が変わってしまう
- 人によっては船酔いする
- 散骨代行の場合、どのように散骨されたか分からない
- 親戚に理解してもらえない
- 海洋散骨にお坊さんは同行しない
- 故人の生きた証を示す場所がない
後悔をしないように、メリットだけでなくデメリットもしっかりと確認しておきましょう。
むしろデメリットを理解しておくことの方が大事ですよ。
家族の遺骨を砕く必要がある
海洋散骨には、家族の遺骨を砕く必要があるというデメリットがあります。
散骨をするときの最低限のマナーは『遺骨を細かく砕く』ということです。
どの程度まで細かく砕くかというと、だいたい【2mm以下】が目安となり、実際に海洋散骨をするときには、さらに細かく【パウダー状】にまで砕きます。
火葬をすると、故人の《喉仏》や《頭がい骨》が残っており、それらの形を維持したまま骨壺に納めますが、海洋散骨をするには遺骨をすべて砕かなくてはいけません。
家族の遺骨を砕くことに心苦しさを感じる人は多いので、海洋散骨をするときには家族の心情を十分に考慮しましょう。
ちなみに、遺骨を砕かずに散骨すると、
- 死体等遺棄罪
- 墓地・埋葬等に関する法律
に抵触する可能性がありますので注意してください。
散骨するなら『遺骨の粉砕』は避けられないんです。
海にまくと遺骨は二度と戻らない
海洋散骨の最大のデメリットは、海にまいてしまうと遺骨は二度と戻らないということです。
家族が亡くなったばかりの頃は、故人の希望を叶えてあげたいという気持ちが強くなります。
それで、故人の希望通り海洋散骨をするときに遺骨を全部まいてしまうのです。
でも、少し気持ちが落ち着いてきた頃に、「少しくらい遺骨を残しておけばよかったかな・・・。」と後悔するんですよね。
遺骨を自然に帰すというのは『二度と遺骨は戻ってこないと覚悟する』ことを意味します。
もしも【後悔をしない】という自信がないなら、遺骨を全部まかず、一部を取り分けて残しておくといいですよ。
取り分けた遺骨は、自宅で《手元供養》をしてもいいですし、お墓や納骨堂に納めるのでもいいでしょう。
とにかく『一時的な感情』だけで散骨しないよう十分に注意してくださいね。
天候によって散骨の日程が変わってしまう
海洋散骨には天候によって散骨の日程が変わってしまうというデメリットがあります。
海洋散骨について調べてみると、どのサイトや雑誌でも【キレイで穏やかな青い海】の画像が出てきますよね。
しかし、海はいつでも【キレイで穏やかな青い海】ではなく、天候が悪ければ海が荒れてしまい船を出すことができません。
特に台風の発生しやすい時期は要注意ですから、海洋散骨をするときには候補の日をいくつか決めておくことが大事です。
海洋散骨は天候に左右されやすいことを十分に理解しておきましょう。
ちなみに、春から初夏にかけては少しだけ海が穏やかになるので、この時期を狙えば理想的な海洋散骨ができる可能性が高くなりますよ。
当日の天候だけは神頼み、いや仏様頼みですね。
人によっては船酔いをする
海洋散骨は、人によっては船酔いをするというデメリットがあります。
海洋散骨では、だいたい1~3時間は船に乗っていなくてはならず、しかも使用する船はあまり大きくないので波の影響を受けやすいです。
そのため、日頃から乗り物酔いをしやすい人は船酔いをする可能性があります。
ですから、乗船する30分前くらいに酔い止め薬を飲んでおき、さらに消化のよいものを軽く食べておきましょう。
睡眠不足や空腹の状態だと船酔いをしやすいそうですよ。
《関連記事》:海洋散骨は【船酔い】が心配。酔わないための効果的な対処法16選
散骨代行の場合、どのように散骨されたか分からない
海洋散骨というのは『散骨代行』を依頼した場合、どのように散骨されたか分からないというデメリットがあります。
海洋散骨は、家族が同行せずに専門業者へ全面的に任せることもでき、その方が散骨費用もかなり抑えられます。
しかし、全面的に任せた場合、現地の様子を自分の目で見ることができません。
もちろん、業者は遺骨を丁寧に扱い、適切な方法で散骨をしてくれて、散骨時の写真だってもらえます。
それでも「家族の遺骨がどのように扱われているか心配だ。」という人は、費用は増えてもちゃんと同行をするべきです。
もしも、散骨には同行できない、だけど心配で仕方ないという人は、海洋散骨そのものを考え直してください。
散骨代行は【とにかく費用を抑えたい人】だけが依頼しましょう。
親戚に理解してもらえない
海洋散骨には、親戚に理解してもらえないというデメリットがあります。
海洋散骨はまだ新しい葬送形態なので、理解をしてくれない人も多いです。
特に、それが故人との関係が近い親戚である場合、何らかの文句を言われることも十分に考えられます。
海洋散骨をしたことにより親戚間でモメることはけっこうあるので、その点は十分に注意が必要です。
遺骨を海にまくことが故人の強い希望であったことなど、海洋散骨に至った経緯をちゃんと説明できるようにしておきましょう。
親戚にはできるだけ事前に報告をしてください。事後報告は親戚間トラブルのもとになります。
海洋散骨に同行してくれるお坊さんは少ない
海洋散骨の場合、お墓や納骨堂への納骨とは違って、同行してくれるお坊さんが少ないというデメリットがあります。
遺骨をお墓や納骨堂へ納めるときには、お坊さんに供養をしてもらい、これによって家族も安心することができます。
しかし、海洋散骨の場合は同行してくれるお坊さんが少ないのです。
一部の業者ではお坊さんが同行するサービスを提供していますが、そこまでしない業者もたくさんあります。
ほとんどの場合は、お花やお酒と一緒に故人の遺骨を海にまくだけです。
お坊さんによっては依頼すれば海洋散骨に同行してくれるかもしれませんが、そのようなお坊さんは少数でしょう。
海洋散骨の場合は『可能なら供養をする』という程度でいいと思います。
《関連記事》:【僧侶目線で解説】海洋散骨のときには船の上でも供養ができるのか。
故人の生きた証を示す場所がない
海洋散骨をすると、その後に『故人の生きた証を示す場所がない』というデメリットがあります。
お墓があれば、故人の遺骨を納めたお墓が『故人の生きた証を示す場所』となります。
しかし、海洋散骨をすると遺骨がありませんから、そのような場所がなくなります。
もちろん、海全体が故人のお墓みたいなものですが、線香や生花を供えることがないので『何もしてあげられない』という感覚になるんですよね。
とはいえ、線香や生花などを供えられないからこそ家族の負担を減らせますので、考え方によっては『故人の生きた証を示す場所』のない方がメリットになります。
どんなことも『考え方』次第ですね。
まとめ
海洋散骨には魅力的なメリットがあれば、注意するべきデメリットもあります。
海洋散骨のメリットは、
- 故人の希望に添える
- お墓を建てる必要がない
- 次の世代の人たちが安心できる
- 地球環境にやさしい
です。
一方で、デメリットは、
- 家族の遺骨を砕く必要がある
- 海にまくと遺骨は二度と戻らない
- 天候によって散骨の日程が変わってしまう
- 散骨代行の場合、どのように散骨されたか分からない
- 親戚に理解してもらえない
- 海洋散骨にお坊さんは同行しない
- 故人の生きた証を示す場所がない
です。
海洋散骨には【お墓を建てる必要がない】という大きなメリットがある一方で【遺骨を海にまくと二度と戻ってこない】という大きなデメリットもあります。
海洋散骨はまだ一般化していない葬送形態なので、メリットとデメリットを十分に検証することが大事です。
海洋散骨をするかどうか、本記事を参考にしていただき、後悔のないよう家族でよく話し合ってから決めてくださいね。
※海洋散骨の全体について知りたい方はこちらの記事も読んでみてください。