分骨した遺骨を自宅に置いておくのはダメなんですか?
その心配をする人はとても多いですよ。
大切な人の遺骨は、分骨をして自宅に置いておきたいですよね。
遺骨を自宅に置いて供養することを『手元供養』といいます。
一部の人は「手元供養をするのは良くない。」と言いますが、そんなことはありません。
手元供養は、宗教的にも法的にも問題はないので、自宅でしっかりと供養してあげてください。
- 手元供養をしても問題ない理由が分かります
- 分骨に対する心理的ハードルが下がります
- 手元供養は良くないことなの?
- 分骨をした遺骨は家に置いておきたい
- お墓を建てるつもりはない
この記事を書いている私『ちょっき』は僧侶になって25年です。僧侶としての経験や視点をふまえて海洋散骨に関する情報を発信しています。
手元供養とは何?
近年では『お墓』を持たずに、
- 遺骨を自宅に置いて供養する。
- 遺骨の一部を分骨し、それを自宅に置いて供養する。
という人が増えています。
遺骨を自宅に置いて供養することを『手元供養』といいます。
手元供養は昔からある供養方法ですが、、ほとんどの人は『お墓』を建てて納骨をしていたので、今まであまり普及していませんでした。
しかし、近年では、
- お墓の維持管理の負担が大きい
- お墓の継承者がいない
- 仏教(宗教)離れの加速
などの理由により、お墓は必要ないと考える人が増えています。
また、お墓に納骨すると『故人を土の中に閉じ込めてしまう』ような感覚になってお墓を建てないという人も多いんですよね。
でも、お墓を建てないということは、どこか他の場所で遺骨を保管しなくてはいけません。
それで、自宅で遺骨を保管する人が増えたため、結果的に『手元供養』という方法が広く認知されるようになりました。
手元供養は良くないの?
手元供養をするにあたり「遺骨がずっと自宅にあるのは良くないことなのかな?」と心配になる人は多いです。
もう少し具体的に言うと、
- 自宅に置いたままだと故人は成仏できないのかな?
- 分骨をしたら、故人があの世で5体満足でいられないの?
- 法律上の問題はないの?
といったことが心配になるわけですね。
安心してください、手元供養は仏教的にも法的にも全然問題はありません。
手元供養をしたいのであれば、心配せずに遺骨をあなたのそばに置いてあげてください。
自宅に遺骨を置いたままだと故人は成仏できない?
ときどき「お墓に納骨しないと故人が成仏できない。」と言う人がいます。
以前にテレビ番組でそのような発言をした占い師がいて、その影響で大勢の人が不安な思いをしました。
しかし、その占い師の言ったことはデタラメであり、自宅に遺骨を置いたままでも故人は成仏できるので安心してください。
成仏できるかどうかは、故人の《あの世における仏道修行》の成果、あるいは仏様のお導き次第であって、お墓はまったく関係がありません。
遺骨がどこにあっても成仏はできますよ。
お墓に納骨をするのは、故人の死を受け入れるために『踏ん切り』をつけさせることが目的です。
故人の遺骨を見てしまうと、家族はなかなか悲しみから抜け出せません。
それを、故人の魂が仏の世界に渡るとされる49日忌までに納骨をすることで『踏ん切り』をつけさせたんですよね。
それに、お墓というのは【遺骨を納める場所】であること以外に、もう一つ【あの世とこの世を繋ぐ場所】とされており、お墓の役割としてはこちらの方がずっと重要です。
というか、そもそも遺骨というのは故人の『抜け殻』みたいなもので、それがどこの場所にあろうと、すでに仏の世界へ行った故人には一切影響がないんですよね。
なので、遺骨のある場所と成仏とは無関係であるため、遺骨をどこに安置するかはあなたが自由に決めてかまいません。
分骨をしたら故人が五体満足でいられない?
手元供養では、分骨した遺骨を安置するケースも多いです。
これに対して「分骨をしたら、故人があの世で五体満足でいられないからダメだ。」と言う人もいます。
しかし、分骨をしても故人は五体満足のままで元気にお過ごしですから安心してください。
故人の遺骨がどこの場所にあろうと、そしてどんな状態であろうと、すでに仏の世界へ行った故人には一切影響がありません。
じつは、分骨というのはずっと昔からあるものなんですよね。
今から約2500年前、仏教を広めた【お釈迦様】が亡くなったときに、弟子たちがお釈迦様の遺骨を分けて持ち帰りました。
これって完全に【分骨】ですよね。
でも、そのときには誰も「お釈迦様があの世で五体満足でいられないからダメだ。」なんて言いませんでしたよ。
また、関西地方では火葬をした後にすべての遺骨を収骨するのではなく、部分的に収骨をする『部分収骨』が多いです。
となると、関西地方の方々はみんな《あの世で五体満足でいられない》ということになりますよね。
さらに、地方によっては、信仰している宗派の本山に遺骨の一部を納骨する『本山納骨』という習慣があるので、その地方の方々も《あの世で五体満足でいられない》ということになります。
もしも本当に『分骨すると故人が五体満足でいられない』のなら、そんな風習は生まれないと思いませんか?
《関連記事》:『分骨は良くない』というのは間違い。分骨しても問題ない理由を解説します
手元供養は『法律』の面で問題ないの?
仏教的に手元供養が問題なくても、法的に問題があるかどうか気になりますよね。
ご安心ください、手元供養は法的にも問題はありません。
多くの人は、
- 遺骨を自宅に置いておくこと
- 粉骨など『遺骨の加工』をすること
について違法性を心配しますが、どちらも大丈夫です。
遺骨を自宅に置いておくことは違法?
お墓や遺骨に関わることは【墓地、埋葬等に関する法律】という法律に定められています。
そして、この法律では『遺骨を自宅に置くこと(=手元供養)が違法ではない』と解釈できるんです。
遺骨の安置場所については、
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。
引用:『墓地、埋葬等に関する法律』第4条
と定められています。
これはつまり、『遺体の埋葬』や『遺骨の埋蔵』は墓地として認められた場所でしか行えないという意味です。
しかし、遺骨を自宅に置いておくことは『埋葬』にも『埋蔵』にも該当しません。
埋葬と埋蔵は、どちらも【土中に埋める】ということを意味するので、土中に埋めずに保管することは『埋葬又は焼骨の埋蔵』のどちらにも該当しないのです。
そのため、遺骨を土中に埋めなければ保管の場所は問わないと解釈できるので、自宅でも遺骨を安置できるんですよね。
粉骨など『遺骨の加工』をすることは違法?
手元供養をするために、分骨した遺骨を小さな骨壺やケースなどに収納したり、遺骨を加工してペンダントにする人もいます。
遺骨をケースに入れたりペンダントにするには【粉骨】が必要です。
この粉骨などの『遺骨の加工』が違法なのではないかと心配する人もいます。
大丈夫、遺骨の加工についても法的に問題はありませんよ。
例えば、海洋散骨をするときには粉骨が必要です。
粉骨に対する厚生労働省の見解は『焼骨は、その形状を視認できないよう粉状に砕くこと。』となっています。
つまり、国は遺骨を砕く(加工する)ことを認めているんですよね。
ちなみに、欧米諸国では遺骨を【2ミリ以下】まで砕くのが基本です。
このように、遺骨の加工についても法的に問題は何もないのでご安心ください。
海洋散骨をした人の多くは手元供養をしている
海洋散骨の話が出たので、ここで少し海洋散骨と手元供養について書いていきます。
海洋散骨をした人の多くは手元供養をしています。
海洋散骨をする場合、遺骨の全部を海にまいてしまうのではなく、一部は分骨しておいて自宅に安置する人がほとんどです。
海洋散骨を希望する人はだいたい「自分の遺骨は全部海へまいてほしい。」と言うんですよね。
でも、遺族としては遺骨が全部無くなってしまうのは淋しいので、少しだけ遺骨を残して、いつでも故人を身近に感じていたいのです。
僧侶の私としても、海洋散骨をするなら遺骨の一部を分けて残しておくことをおすすめします。
少量の遺骨であれば少しのスペースでも安置することができ、また、お墓のように大きな維持費もかかりせん。
何より、故人の生きた証を残しておくことで、遺族の気持ちが安らぎますよね。
なので、海洋散骨をする場合は遺骨の一部を分骨しておいて、それを自宅で手元供養するのがよいと思います。
※手元供養をするにあたりこちらの記事を読んでみてください
まとめ
大切な人の遺骨は、一部を分骨して、それを自宅で安置しておいても大丈夫です。
遺骨を自宅に置いたり加工をしてアクセサリーにすることは、仏教的にも法的にも問題はありません。
少しだけでも遺骨があれば、いつでも故人を身近に感じられますよね。
遺骨をお墓に納めることだけが供養ではないので、大切な人の遺骨は自宅で心を込めて『手元供養』をしてあげてください。
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