海洋散骨をしたくても、散骨によって海を汚してしまわないか心配になりますよね。
故人の希望を叶えるためとはいえ、それが海洋汚染となってしまうのであれば気が引けることでしょう。
でも安心してください、遺骨を海にまいても海洋汚染にはなりません。
この記事では、海への散骨と海洋汚染について現役僧侶の私が解説しています。
安心して海への散骨ができるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
遺骨を海へまいても海洋汚染にはならない
海へ散骨をしても、海洋汚染にはなりません。
なぜなら、
- 遺骨の成分は無害だから
- ほとんどの海洋散骨業者は焼骨の無害化処理をしているから
です。
遺骨の成分は無害
遺骨を海にまくと、遺骨の成分が海に流れ出るので、それが何となく悪影響を及ぼしそうで心配になりますよね。
でも、遺骨の成分は無害なので安心してください。
なぜなら、遺骨の成分は、
- リン酸カルシウム
- 炭素
であり、どちらも無害なのです。
まず、リン酸カルシウムは食品添加物にも使われている成分です。
人が食べても安全なのですから、海の中に流れ出ても害はありません。
そして、炭素というのは、大気、海、地中など自然に存在している無害な成分です。
ですから、遺骨の成分は無害なので、それを海にまいても海洋汚染にはなりません。
それに、海の中にはいろんな生物の骨があります。
そこへ細かく砕かれた人間の骨が混ざったというだけの話ですから、何も心配はありません。
ほとんどの海洋散骨業者は焼骨の無害化処理をしている
基本的に、遺骨は無害です。
しかし、焼骨(火葬後の遺骨)にはときどき『六価クロム』という有害物質が含まれることがあります。
六価クロムはとても強い酸化作用があり、人が触ると皮膚に炎症を起こしたり、ひどい場合は癌の原因になるとも言われています。
そのため、焼骨に六価クロムが含まれている場合、ほとんどの海洋散骨業者はちゃんと無害化処理をしてくれます。
六価クロムの無害化処理は、専用の還元剤(液剤)を焼骨に噴きつけることで無害の三価クロムに変換するという方法を用います。
これにより、ちゃんと無害化された焼骨を海へまくことができるのです。
ですから、海洋散骨をするときは、しっかりと無害化処理をしてくれる業者を選ぶことが大切です。
ところで、なぜ六価クロムのような有害物質が焼骨に含まれてしまうのでしょう。
六価クロムというのは自然界にはほぼ存在せず、化学的な要因で発生します。
じつは、火葬をする過程で六価クロムが発生し、それが遺骨に付着してしまうことがあるんです。
火葬時には棺桶をステンレス製の架台に乗せます。
この架台が何十年も使用された古いものであったり、安価な架台である場合に六価クロムが発生しやすくなり、それが遺骨に付着するのです。
とはいえ、六価クロムは常温で気化することがないため、自宅で焼骨を保管していても人体に害を及ぼすことはありません。
また、火葬をしたら必ず六価クロムが付着するわけではありません。
それに、近年では六価クロムを発生させない火葬炉を使用している火葬場が増えています。
ですから、焼骨に六価クロムが含まれることは少なくなっていますし、もし含まれていても業者が無害化してくれるので、安心して海洋散骨をしてください。
法律にも抵触していない
海を利用するには『海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律』が定められています。
この法律は、略して『海洋汚染防止法』と言われており、油、有害液体物質、廃棄物などを海へまくことを禁止するための法律です。
海洋散骨は遺骨を海へまくので、この法律に抵触しないか心配する人もいます。
しかし、細かく砕いた無害の遺骨をまけば海を汚すことがないので、海洋汚染防止法には抵触しません。
適切な方法であれば誰にも迷惑をかけることなく合法的に散骨できますので安心してください。
《関連記事》:海洋散骨は違法じゃない。散骨のルールや自治体の条例を紹介
散骨する場所によっては悪影響がある
海洋散骨というのは、散骨する場所によっては悪影響が出ます。
ただし、それは海洋汚染ではなく、漁場付近や海水浴場付近など周辺の環境に対する悪影響です。
漁場付近での海洋散骨は悪影響がある
何度も言いますが、海洋散骨をするときには『無害の遺骨』をまくので海を汚染することはありません。
しかし、漁場付近で海洋散骨をすると悪影響があります。
私たちは、あらゆるものに【イメージ】というものがありますよね。
どんなに無害な遺骨であっても『漁場付近』でまいてしまうと、そこで獲れた魚に対する悪いイメージが生まれます。
海洋散骨した漁場近くで獲れた魚だと知った人は、きっと『人間の遺骨を食べた魚』というイメージが強すぎて、その魚を食べないでしょう。
このように、漁場付近で散骨をすると、海洋汚染にはならなくても【漁場に対するイメージを汚染する】ことになり、漁業関係者に重大な悪影響を及ぼします。
でも安心してください。
海洋散骨は、漁場から十分に離れた場所でしかできないようにルールが決められています。
なので、常識的な散骨業者に依頼をしていれば、漁業関係者に迷惑をかけるようなことはなく、もちろん海に与える悪影響もありません。
海水浴場付近での海洋散骨は悪影響がある
漁場付近の他に海洋散骨をして悪影響があるのは『海水浴場付近』です。
せっかく海水浴を楽しんでいるのに、近くで遺骨をまいているのが見えたら嫌ですよね。
もちろん、仮に海中で遺骨が体についたところで身体的な害はありません。
でも、『他人の遺骨が自分の体についた』ということに対する精神的な害はあります。
また、実際に遺骨が体につくことがなくても、「もしかしたら・・・」という気分になり、せっかくの海水浴が台無しになってしまうことの損害はあります。
それに、海水浴客を相手に商売をしている人たちにも重大な損害を与えるのは必至です。
このように、海水浴場付近での海洋散骨は、海を汚染することはなくても海を訪れた多くの人に悪影響をおよぼします。
しかし、漁場付近と同様に、海水浴場から十分に離れた場所でないと海洋散骨ができないルールになっています。
そのため、やはり常識的な散骨業者に依頼をしていれば、海水浴客や海水浴場関係者に迷惑をかけることはなく、もちろん海に与える悪影響もありません。
まとめ
海に散骨をしても、海洋汚染にはなりません。
なぜなら、
- 遺骨の成分は無害だから
- ほとんどの海洋散骨業者は焼骨の無害化処理をしているから
です。
ただし、海洋散骨のルールが守られていなければ、海洋汚染はなくても、漁場付近や海水浴場付近など周辺の環境に対する悪影響があります。
海を汚さないために、そして誰にも迷惑をかけないように、海洋散骨をするときは信頼できる散骨業者に依頼をしましょう。
※海洋散骨の概要についてはこちらの記事で詳しく解説しています。