お葬式はせずに直葬じゃダメかな?
直葬でも問題はありませんよ。でも、できればちゃんとお葬式をしてほしいですけどね。
最近いろんなメディアでよく出る『直葬(ちょくそう)』というワード。
直葬は、お葬式をせずに火葬だけをするという非常に簡略化された葬送形態です。
直葬には大きなメリットがいくつかあるので、「お葬式はしなくてもいい。」という人たちから注目を集めています。
しかし、安易に直葬をしてしまうと、後になって思わぬトラブルを招く可能性があるので要注意です。
故人との最後のお別れで後悔をしないように、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 直葬がどのようなものか分かります。
- 直葬が選ばれる理由が分かります。
- 直葬でトラブルになった事例を知ることができます。
- お葬式なんてしなくてもいい。
- お葬式のことは、できるだけお金をかけたくない。
この記事を書いている私『ちょっき』は僧侶になって25年です。僧侶としての経験や視点をふまえて海洋散骨に関する情報を発信しています。
『直葬』とは、お葬式をせずに火葬だけをすること。
直葬とは、お葬式を行わずに火葬だけをするという非常に簡素化された新しい葬送形態のことです。
直葬には、
- 経済的な負担が少ない
- 体力的な負担が少ない
- 精神的な負担が少ない
- 短時間で終わる
といったメリットがあり、特に経済的な負担が少ないのが直葬の大きなメリットです。
葬儀費用の平均というのは家族葬でも100万円を上回りますが、直葬ならその半額以下に葬儀費用を抑えられます。
また、お葬式をしないので、体力的な負担が少なく、さらに火葬場へ行くのは身内だけなので精神的な負担も少ないです。
それに、お葬式に関する打ち合わせなども必要ないので、時間を大幅に短縮できます。
このように直葬には魅力的なメリットがあるので、直葬をする人が増え続けています。
しかし、当然ながら直葬にはデメリットもあり、
- 親戚や知人からの理解が得られない
- 後からいろんな人が弔問に来てしまう
- 菩提寺とのトラブルが起きてしまう可能性がある
- 結局は後悔する
などが挙げられます。
お葬式は『告別式』ともいいますが、文字どおり【故人と最後のお別れをするための式】です。
しかし、直葬はそれを省略することになるので、親戚や知人から「ちゃんとお別れをしたかったのに!」と文句を言われることもあります。
そして、後から訃報を聞いた人たちは、遺族の自宅へ弔問をしに来る可能性が高いです。すると、遺族としては誰かが来るたびに対応をしなければならず、それが逆に疲れるんですよね。
また、菩提寺(自分の家のお墓があるお寺)に無断で直葬をしてしまうと、高確率で菩提寺とトラブルになります。
多くのお寺では、
- お葬式は必ず菩提寺が執り行う
- 納骨するには戒名をつけることが必須
といったような【お墓へ納骨するための条件】があるので、お寺に無断で直葬をすると、お墓へ納骨できなくなります。
このように、思いもよらぬデメリットがあるせいで「こんなことなら、ちゃんとお葬式をしておけばよかった。」と直葬にしたことを後悔する人も多いんですよね。
直葬はメリットの部分が目立ちますが、その裏で意外なデメリットがあることを忘れてはいけません。
直葬が選ばれる主な理由
直葬が選ばれる主な理由としては、
- 費用が安い
- お葬式(宗教行為)の必要性を感じない
- 故人の強い遺志
ということが挙げられます。
費用が安い
直葬を選ぶ理由として最も多いのは『費用が安い』ということです。
以前に葬儀社のスタッフさんから聞いた話ですが、直葬を選ぶ人の70%が【お金をかけたくない】という理由なのだそうです。
お葬式にかかる費用は家族葬でも100万円以上かかりますが、直葬であればその半額以下まで費用を抑えられます。
ですから、金銭的な問題を抱えている人にとっては、費用の安い直葬がとても魅力的なものに映ることでしょう。
しかし、いくら直葬が安いとはいえ《20万円~40万円》くらいはかかります。
たまに葬儀社の広告などに【10万円以下】で直葬ができると掲載されていますが、実際のところ10万円以下ではかなり難しいと思いますよ。
葬儀社としては人件費や材料費そして多額な宣伝広告費をかけているので、いくら直葬とはいえ10万円以下の金額では利益が出ません。
例えば、生活保護を受けていた人が亡くなると直葬になりますが、このときに行政から担当葬儀社へ直葬の費用として20万円程度支払われます。
行政のお金はすべて【税金】なので、直葬の費用についても無駄なお金は出しません。
ですから、それはつまり直葬をするためには最低でも20万円が必要であることを意味しています。
じつは、【価格の安さ】を強調している葬儀社は、お客さんがオプションを追加するように上手く誘導しています。
まずは安い価格に応じた『ちょっと物足りない内容のプラン』を見てもらい、その後に少しずつ内容のグレードアップを提案していくんですよね。
ですから、広告では【10万円以下】となっていても実際にはさまざまな追加料金が発生し、結局は相場の20万円~40万円近くの料金を支払うことになるでしょう。
直葬を選ぶ人の中には「ウチはお金がないから、費用が1番安い葬儀社でいいよ。」と言う人もいますが、ほとんどの場合その金額だけではすまないので要注意です。
ヘタをすれば相場以上の金額になってしまう可能性もあるので、【価格の安さ】だけで選ばないようにしましょう。
お葬式(宗教行為)の必要性を感じない
直葬を選ぶ理由として『お葬式の必要性を感じない』という人もいます。
そのような人は、お葬式を含めた宗教行為そのものに対して必要性を感じていません。
宗教というのは『信じること』がすべてなので、それができない人にとって宗教は無意味です。
そして、ほとんどのお葬式は何らかの宗教行為によって執り行われますので、宗教を信じない人にとってはお葬式そのものが【不要なもの】となります。
しかし、「宗教を信じない。」と言っている人でも、
- 子どもが生まれたら初宮参りや七五三
- 年末になればクリスマス
- 年明けには初詣
などのように、意識をしていなくても立派な宗教行為をしており、完全な無宗教ではないんですよね。
とはいえ、宗教は誰にも強制されるものではないので、どうしてもお葬式の必要性を感じない人は直葬でよいと思います。
あるいは、近年では『無宗教葬儀』という【宗教行為をしないお葬式】もあるので、それでもよいでしょう。
故人の強い遺志
お葬式は『故人のため』に執り行うものですから、生前に本人が「自分のお葬式はしなくていい。」と言っていたら、家族は本人の意思を尊重するでしょう。
そのため、故人の強い遺志により、お葬式をせず直葬にするというケースもあります。
しかし、故人の遺志を尊重したくても、お寺の檀家になっていたり、うるさい親戚がいるなどの理由でお葬式をせざるを得ないことも珍しくありません。
故人の遺志を尊重することはとても大切ですが、後でさまざまなトラブルが起きてしまう可能性もあるので柔軟な判断が必要です。
お葬式をするかどうかの判断は、現状をよく考えてから可能な範囲で『故人の遺志』を尊重してあげてください。
直葬をした後のトラブル
最近では直葬をする人が増えているとはいえ、それでもまだ認知されていない地域も多くあります。
ですから、直葬を初めて知った人は、
- 手抜きをしている
- 過度な節約である
- 故人の尊厳を守っていない
といったイメージを抱くこともあります。
直葬は後になってからトラブルが起きることもあるので十分な注意が必要です。
親戚や知人から理解を得られず文句を言われる
一般的なお葬式では、親戚や知人など【故人と縁があった人】が参列し最後のお別れをします。
しかし、直葬ではそれを一切せず、遺族など『故人の身内だけ』で最後のお別れをすることになります。
すると、後になって親戚や知人から理解を得られず文句を言われることがよくあるんです。
遺族はいろんな理由があって直葬にしたわけですが、他の人たちにはそれが分からず【故人と最後のお別れができなかった】という事実だけが残ります。
それで、
- 「最後に故人の姿を見たかったのに・・・。」
- 「お葬式をしないなんて非常識だ!」
- 「親戚なんだから最後のお別れくらいさせてほしかった。」
などと文句を言われてしまうのです。
ですから、直葬にする場合は、【故人と縁があった人】に対してしっかりと理由を説明できるようにしておきましょう。
菩提寺との関係が悪くなる
お葬式をするかどうかは、基本的には遺族が自由に決めることです。
しかし、すでに『菩提寺(ぼだいじ)』がある場合はお葬式をしなくていけません。
念のため『菩提寺』について説明しておきますね。
例えば、あなたの家のお墓がお寺(仮称:A寺)にある場合、あなたの家にとってA寺は『菩提寺』となります。
そして、A寺にとっては、あなたの家が『檀家(だんか)』となります。
お寺にお墓を建てるときは、必ず『菩提寺と檀家の関係』になり、檀家(あなたの家)のお葬式や法事はすべて菩提寺(A寺)が担当するという約束をするのです。
そのため、あなたの家で不幸があった場合は、菩提寺(A寺)にお葬式を依頼する必要があります。
それなのに無断で『直葬』をしてしまったら、菩提寺との関係が悪くなるのは必須です。
どうしても『直葬』をしたい場合は、まずはお寺に相談をしてください。場合によってはお寺が柔軟に対応してくれるかもしれません。
もしもお寺からの許可がおりず、それでも直葬をしたい場合は、お寺との付き合いを解消し、使用している墓地をお寺に返還する必要があります。
そうすると、新たに墓地を探さなくていけませんし、墓石の撤去費用などもかかってしまいます。
つまり、すでに菩提寺がある場合、実質的には『直葬』にすることは難しいのです。
結局は後悔する
直葬をしたい人の多くは『直葬のメリット』の部分がたくさん見えている状態でしょう。
しかし、すでに紹介してきたように直葬にはデメリットもありますし、トラブルになることも多いんですよね。
数万円くらいで直葬ができると思ったのに結局は相場どおりの金額を支払い、さらに親戚や知人からは文句を言われ、そのうえ菩提寺ともトラブルになる。
それで、直葬が思ったよりもメリットが少ないどころか余計に大変であることに気がつき、「こんなはずじゃなかったのに…。」と結局は後悔するというケースも多いのです。
直葬にするなら火葬場にはお坊さんを呼ばない
ここで、僧侶(お坊さん)として僕からのお願いです。
直葬にするなら火葬場にはお坊さんを呼ばないようにしてください。
直葬というのはお葬式をしない葬送形態なので、お坊さんの出番は一切ありません。
ところが、直葬をする人の中には、「何もしないのは気が引けるから、少しだけでもお坊さんにお経を読んでもらった方がいい。」といって、お坊さんに火葬場まで来てもらい【火葬直前の簡単な供養】を依頼する人がいます。
直葬を選んだということは、家族でよく話し合って《お葬式をしない》と決めたはずですよね。
それなのに、火葬直前に簡単なお経だけ読んでもらうなんて、そんな中途半端なことをしないでください。
中途半端な供養をするのは、故人に対して、そしてお坊さんに対しても失礼です。
じつは、お経を読むだけでは【お葬式の代わり】にはなりません。
詳細については割愛しますが、お坊さんが故人へ『引導』を渡して、それでようやくお葬式になるのです。
正直に言うと、お経を読むことなんて【二の次】の要素でしかないですし、最重要の『引導』だって火葬場でササッとできるものではないんですよね。
そもそも、すべての火葬場で【火葬直前の簡単な供養】ができるとは限りません。
火葬場によって施設内の構造がまったく違いますので、お坊さんが供養をするスペースがない火葬場も多いのです。
なので、直葬をするなら火葬だけをしてください。
後悔のないように、ちゃんとお葬式をする
直葬には魅力的なメリットがありますが、それにもかかわらず【直葬にしたことを後悔する人】も多いです。
なぜなら、先ほども紹介したように直葬はデメリットも多いからです。
ですから、亡くなった大切な家族のためにも、後悔のないように、ちゃんとお葬式をするということを優先的に考えてください。
直葬を選ぶ人の70%は【費用が安いから】という金銭的な理由です。
お葬式は急にやって来るので、いざというときに金銭的な余裕がなく、それで直葬を選んでいます。
しかし、「やっぱり、ちゃんとお葬式をしてあげればよかったな。」と後悔をする人も多いです。
それならば、ちゃんとお葬式をするつもりで、
- 互助会に入って少しずつ葬儀費用の積み立てをしておく
- 複数の葬儀社に資料請求し、お葬式の内容と費用を確認しておく
といった準備をしておけばいいのです。
お葬式の準備をするには互助会への入会が有効な手段となります。
互助会に入り、契約コースを選んで積み立てをしておけば、お葬式のときには大幅な割引きが受けられ、さらに格安の価格で豪華施設を使用できます。
また、事前に積み立てを済ませておけば、その分だけお葬式のときに支払うお金が少なくてすむんですよね。
お葬式に対する金銭的な心配があるのなら、互助会に入会するなどして、今から少しずつ費用の準備をしておくことが大事です。
ですから、安易に『直葬』を選ぶのではなく、『一日葬』や『家族葬』などの規模の小さなお葬式でもので、ちゃんとお葬式をやってあげてください。
まとめ
直葬は、従来のようなお葬式をせず、最初から火葬をするという大幅に簡略化された葬送形態です。
直葬であれば、
- 経済的な負担が少ない
- 体力的な負担が少ない
- 精神的な負担が少ない
- 短時間で終わる
というメリットがあるので、近年では多くの人の注目を集めています。
しかし、直葬には、
- 思ったよりも費用の削減ができない
- 菩提寺との関係が悪くなる
- 親戚や知人たちから文句を言われる
- 結局は後悔する
といったデメリットもあります。
直葬はメリットばかりに目が行ってしまがちですが、ちゃんとデメリットについても理解しておきましょう。
大切な人を後悔なく送り出すために、安易に『直葬』を選ぶのではなく、家族でよく話し合って、できればちゃんと『お葬式』をしてあげてくださいね。
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