自分のお葬式を【自分が生きている間】にできるって本当?
はい、それは『生前葬』といいます。
本人がまだ存命中に執り行うお葬式のことを『生前葬(せいぜんそう)』といいます。
生前葬は、自分が生きている間に、ご縁のあった人達に対して感謝の気持ちを伝えたり、社会的なお別れをするために行われます。
自分のお葬式を存命中にやっておけば、いざというときに家族に迷惑をかけずにすみますよね。
しかし、『生前葬』の具体的な内容を知っている人はほとんどいません。
そこで、この記事では『生前葬』について詳細に解説していますので、興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。
- 生前葬の具体的な手順や内容が分かります。
- 生前葬のをする理由、メリットとデメリットが分かります。
- 自分のお葬式は生きているうちにやっておきたい。
- 自分のお葬式のことで家族に一切迷惑をかけたくない。
この記事を書いている私『ちょっき』は僧侶になって25年です。僧侶としての経験や視点をふまえて海洋散骨に関する情報を発信しています。
生前葬とは
近年ではとても珍しい形態のお葬式が登場しています。
その名も『生前葬』。
生前葬とは、本人がまだ存命中のときに執り行うお葬式のことをいいます。
通常のお葬式は本人が亡くなってから執り行うので、当然ながら本人の口から最後のお別れを言ったり感謝の気持ちを伝えることができません。
だから、『自分のお葬式』なのに自分自身は何もできないんですよね。
それで、
- 今のうちに自分自身で社会的な区切りをつけておきたい。
- 友人や知人にちゃんと自分の口から感謝の気持ちを伝えておきたい。
- 家族に『お葬式費用の負担』をかけたくない。
という人のために『生前葬』という新たなお葬式の形態ができました。
生前葬では、主催者とご縁のあった人たちを招き、主催者のこれまでの人生を紹介した上で、列席者に向けて感謝の気持ちを伝え、そして社会的なお別れをします。
生前葬には《お葬式》のようにいろんな決まり事がないため、式の内容は主催者が自由に決めることができるのです。
生前葬を『終活』の1つとして考えている人もいますよ。
また、名前が『生前葬』となってはいますが、その内容は《お葬式》とはまったく異なり、宗教的な行為がまったくない【完全な無宗教】で執り行われます。
そのため、生前葬ではお葬式のような祭壇を飾らず、代わりに本人の人生を物語る品などが展示されます。
ですから、生前葬は誰も悲しみの涙を流すことなく、むしろ和やかな雰囲気の中で行われるので、言ってみれば『パーティー』みたいなものなんですよね。
じゃあ、いずれ主催者が亡くなったときには何をするの?
主催者が亡くなった場合は、遺族や近い親戚だけで家族葬または火葬のみを行い、生前葬に列席してくれた人たちには『死亡通知状』などで逝去を伝えるだけです。
ちなみに、一部の著名人も生前葬をしていました。
例えば、ビートたけし、桑田佳祐、永六輔、テリー伊藤、小椋佳、アントニオ猪木、養老孟子、仰木彬など多くの有名人が生前葬を行いました。
とはいえ、いずれもテレビの企画だったようですけどね。
このような有名人たちが生前葬をしたことがきっかけで、『生前葬』の名が世に広まりました。
生前葬をするまでの手順
生前葬をするにはお葬式の場合とは手順が異なります。
生前葬をするまでの手順は、
- 家族の了承を得る。
- 生前葬のだいたいの内容を決めておく。
- 生前葬を依頼する業者(葬儀社やホテル)を選ぶ。
- 現地を見学する。
- 日程と会場を決める。
- 招待する人を選んで人数を決める。
- 招待する人へ連絡をする。
- 執り行う内容を決めて手配をし始める。
- 列席者が決まったら最終的な手配をする。
といったような流れが一般的です。
家族の了承を得る
生前葬をするかどうかはあなたの考え方次第です。
あなたのお葬式ですから、あなたの自由にできる生前葬を選ぶというのもイイと思います。
しかし、あなたには家族がいますし、もちろん家族も生前葬に参加しますよね?
だったら、生前葬をするにあたり、まずは【家族の了承】を得てください。
もしかすると、あなたの家族は一般的なお葬式を望んでいるかもしれませんよ。
あなたが生前葬にしたい理由をちゃんと説明し、家族全員に納得と理解をしてもらってください。
それが済んでから生前葬の準備を始めましょう。
生前葬の大体の内容を決めておく
家族の了承を得られたら、次は【生前葬の大体の内容】を決めておきましょう。
あなたの中で「アレとコレをしたいなぁ。」というものがありますよね?
それが実現可能かどうかは別として、式の大まかなコンセプトを決めたり、列席者に披露したいものなどを、なるべく多く考えておいてください。
あなたの要望を思いつくだけメモなどに列挙しておきましょう。
さらに言うと、やりたいことの内容をできるだけ具体的にイメージしておけると全体のプランが組みやすくなります。
もしも『生前葬でやりたいこと』が何も思い浮かばなかったら、その場合は一般的なお葬式をした方がいいです。
生前葬をするためには主催する人の主体性が何よりも重要です。特に理由もなく生前葬をすると、すべてが中途半端な式となり高確率で後悔をします。
生前葬を依頼する業者(葬儀社やホテル)を選ぶ
生前葬でやりたいことが大体決まったら、次は【生前葬を依頼する業者】を選びます。
どこの業者にも依頼せず生前葬を行うのは大変です、というか、99%の人にはできません。
あなたの希望に沿った内容で、さらに列席者にも喜んでもらうためには業者のサポートが不可欠です。
生前葬を依頼する業者は、大人数のセレモニーを得意分野とする『葬儀社』か『ホテル』が無難でしょう。
しかし、あくまで『生前葬』という名目ですし、すでに生前葬のプランを用意しているところもあるので、施行実績という点でも葬儀社へ依頼する方がよいと思います。
とはいえ、すべての葬儀社に生前葬のプランがあるわけではないので、まずはお住いの最寄りの規模の大きな葬儀社に問い合わせをしてみてください。
また、その際に一般的なお葬式との違いを比較しておくと、本当に生前葬でよいのかという判断材料にもなりますよ。
現地を見学する
生前葬を依頼する業者を選んだら、必ず【現地を見学】しておきましょう。
資料やホームページの画像を見ただけでは、実際の雰囲気や式場の広さがわかりません。
例えば、
- ロビーなどにソファーや椅子がいくつあるのか。
- トイレが、どこに、いくつあるのか。
- 喫煙所の場所が、どこに、いくつあるのか。
- 駐車場の場所と入口、車高や駐車台数の制限はどのくらいか。
ということは現地へ行かないと分からないでしょう。
また、現地スタッフの対応なども見ておくことでスタッフの質をチェックできます。
他にも、現地で気がついた注意点があれば、その内容をチェックしておきましょう。
日程と会場を決める
現地の見学をして、あなたの希望に沿った生前葬ができる場所を予約しておきましょう。
その際に、生前葬をする日程を決めなくてはいけません。
多くの列席者を招待することを考えると、基本的には【土・日・祝日】で日程を組むのが現実的でしょう。
ちなみに、お葬式の日程を決める場合は『友引』を避けますが、生前葬は友引でも問題はありません。
お葬式で友引を避けるのは、『亡くなった人が友人をあの世まで引き連れて行ってしまう』という迷信があるからです。
しかし、生前葬なら主催者が生きているので、友人をあの世へ引き連れて行くことはありません。
招待する人を選んで大まかな人数を決める
生前葬の日程を決めたら、招待する人を選んで大まかな人数を決めます。
生前葬のメリットの1つは【誰が列席するか事前に分かる】ということです。
お葬式の場合は、訃報を通知した人以外にも参列者が来ることも多いですが、生前葬なら招待した人しか列席しません。
また、お葬式は亡くなってから3日〜5日間以内に行われることが多いため、都合がつかず参列できないという人も多いです。
しかし、生前葬なら当日までに十分な日数がありますので、招待された人は都合をつけやすくなり、それだけ列席者が多くなります。
招きたい人をリストアップし、早めに招待状を送っておきましょう。
このときに、招待する人の中で【遠方に住んでいる人】がいるなら、宿泊場所の手配についても考えておいてください。
招待する人へ連絡をする
生前葬に招待する人が決まったら、招待状を送るなどの連絡をします。
一般的なお葬式では訃報の通知をしますが、生前葬の場合は招待状として通知します。
招待状を送るときには、文中に【生前葬にする理由】を書いておく方が無難です。あなたは生前葬について理解をしていても、多くの人にとって生前葬はまだ馴染みがありません。
ですから、いきなり生前葬をするといわれても、招待された方はワケが分からず困惑するかもしれません。
場合によっては「何この人、ふざけてるの?」と誤解されますよ。
また、招待状には《会費》を記載しますが、そこに香典は不要である旨を記載しておきます。生前葬を知らない人の中には、会費と香典の両方を持ってきてしまう人もいるんですよね。
そして、参列者はきっと【当日の服装】で悩むはずですから、服装についてもしっかりと記載しておいた方が親切です。生前葬の服装については、男性はスーツ、女性はワンピースやスーツといった『平服』であることが多いです。
執り行う内容を決めて手配を始める
招待状を送ったら、生前葬で行う内容を決めて、できるところから手配を始めていきます。
あなたが事前に決めておいた『生前葬でやりたいこと』の中から、実現可能なものを予算に合わせて具体的に内容を決めていきましょう。
また、この段階では列席者が確定していないので、人数は関係ないものから手配を始めます。
列席者が決まったら最終的な手配をする
送った招待状の返事が届いたら、列席者の人数に合わせて料理や返礼品などの最終的な手配をします。
人数が決まれば費用総額が分かりますので、予算を大幅にオーバーしていれば内容の見直しを行います。逆に、まだ予算に余裕があれば内容の追加をすることもあります。
列席者と内容がすべて決まれば、最終的な確認をしてから手配をしましょう。
生前葬で行われる内容
生前葬では式の内容を主催者が自由に決められますが、実際のところは行われる内容がある程度は決まっています。
生前葬の内容を一覧表にまとめると、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
開式の言葉 | 司会者による進行 |
主催者の挨拶 | 列席者へこれまでの感謝とお礼の気持ちを伝える |
主催者のこれまでの人生や経歴の紹介 | 作成しておいた主催者の生涯に関する映像や画像を放映 |
来賓の挨拶 | 来賓の方を招いた場合はご挨拶を頂く※必ず事前にお願いをする |
会食・歓談 | 列席者のテーブルを順番に回って話をしていく |
列席者からの言葉 | 親戚・友人などの中から代表で1名にご挨拶を頂く※必ず事前にお願いをする |
余興 | 友人などによる余興※省略されるケースも多い |
閉式の言葉 | 司会者により会が締められる |
開式の言葉
開式時間になると司会者から開式の言葉があります。
生前葬をするなら、ちゃんとプロの司会者に依頼をした方がいいですよ。たまに主催者の知人に司会を依頼するケースもありますが、おまりおすすめできません。
生前葬は、あなたの社会的な区切りをつける大事な式であり、列席者に対して感謝の気持ちを伝える場です。
そんな大事な式を進行するわけですから、ちゃんとプロに任せるべきです。
友人や知人に司会者の経験がある人がいるなら、その人に依頼してもOKです。
主催者の挨拶
開式の言葉の後には、主催者の挨拶があります。
主催者は、列席者に向けてこれまでの感謝と御礼の気持ちを伝え、このタイミングで『生前葬にした理由』についても説明をします。
生前葬では主催者の挨拶が1番大事なので、自分の気持ちを素直に伝えられるように、事前にしっかりとスピーチの内容を考えておきましょう。
主催者のこれまでの人生や経歴の紹介
主催者の挨拶の後は、主催者のこれまでの人生や経歴を紹介します。
ここでは紹介用に作成された画像や映像を列席者に観てもらうことが多いです。
主催者の生い立ちを記録したもの、家族や友人との大事な思い出、今後の目標などを画像や映像に載せて列席者に観てもらいましょう。
ただし、自分の人生を紹介するにあたり、内容が自慢ばかりにならないように気をつけてください。
生前葬の目的は『列席者へ感謝と御礼の気持ちを伝えること』ですよ。
また、生前葬の準備の中で、紹介用の画像や映像を作っていく作業が最も時間がかかります。
まずは素材となる写真や画像と動画データを集め、それらをデータとして取り込み、音声や文字を入れて編集をしていくのです。
画像や映像を作るときは、お金はかかりますがプロに任せましょう。
自作しても構いませんが、プロと素人では出来上がりの質が全然違うので、後悔のないようにしてください。
ちなみに、動画の場合によくあるのですが、動画の最終段階で列席者の名前をエンドロールのようにズラーっと流す演出があります。
これは列席者に対する感謝の気持ちを表すものなので、この演出自体はよいと思いますが、列席者の名前や漢字だけは絶対に間違えないよう細心の注意を払いましょう。
たった1つの不注意のせいで式全体の印象が悪くなります。
来賓の挨拶
主催者のこれまでの人生や経歴を紹介したら、次に来賓の挨拶です。
とてもお世話になった人などに来賓に招き、ご挨拶をいただきます。
注意点として、来賓の人には必ず事前に《挨拶のお願い》をしておきましょう。
会食・歓談
来賓の挨拶の後は、会食と歓談の時間です。
列席者の方々に食事を召し上がっていただいている間に、あなたは各テーブルに挨拶をして回り、お酌をしながら列席者と話をします。
各テーブルを回っているときに、『生前葬』に興味を持った人からいろんな質問が出てくるかもしれません。
そのときは、あなたなりの考えや生前葬の詳細について教えてあげてください。
もちろん、この記事のことを話してくださってもいいですよ♪
列席者からの言葉
式の後半に入った頃には、列席者からの言葉をいただきます。
列席者の言葉は、親戚の1人が代表して行うか、または特に親しい友人が行います。
また、列席者の言葉は、来賓の挨拶と同様、必ず事前に《スピーチのお願い》をしておきましょう。
余興
列席者から言葉をいただいた後は、友人や知人による余興があります。
主催者をよく知る人たちがさまざまな余興で場を盛り上げてくれます。
しかし、余興については省略されるケースも多いので、無理をして式に取り入れる必要はありません。
閉式の言葉
式の最後には、司会者による閉式の言葉があります。
列席者が帰るときには、ちゃんと主催者が見送りながら引き出物などを渡しましょう。
生前葬のメリットとデメリット
お葬式の新しいカタチである生前葬は、今後さらに注目を集めることでしょう。
しかし、生前葬にはメリットだけでなくデメリットもあるため、両方をよく理解した上で生前葬をするかどうかを判断してください。
生前葬のメリット
まずは生前葬のメリットから紹介します。
生前葬のメリットは、
- 自分自身で気持ちを伝えることができる
- 執り行う内容は自由
- 式までに十分な時間がある
- 家族にかけるお葬式費用の負担を軽減できる
- 仏壇やお墓について考える機会ができる
ということです。
自分自身で気持ちを伝えることができる
当たり前ですが、人は亡くなると言葉を発することができません。
ですから、一般的なお葬式の場合、故人の口から参列者へ気持ちを伝えられないんですよね。
一方で、生前葬なら自分の気持ちを自分自身の口で伝えられます。
自分の言葉で感謝とお礼の気持ちを伝え、自分自身で区切りをつけられることが生前葬の最大のメリットです。
執り行う内容は自由
一般的なお葬式の場合、式中に行なわれる内容がほとんど決まっています。
お葬式は宗教ごとのやり方で行われているので、どうしてもお葬式の内容は制限されます。
また、お葬式にはいろんな作法やマナーがあり、参列する側にとっても気をつかう場面です。
故人を偲ぶ気持ちよりもマナーの方ばかりに気が行ってしまう人もいますよね。
しかし、生前葬であれば執り行う内容はすべて自由です。主催者の希望に合わせた内容で執り行えるため、悔いの残らない式にできます。
列席者にとっても、作法やマナーをあれこれ気にする必要もなく気軽に列席できます。
このように、一般的なお葬式に比べて【圧倒的に自由】であることが生前葬の大きなメリットです。
式までに十分な時間がある
お葬式は、亡くなってから3日~5日間に行われることが多いので、お葬式までの【準備の時間】があまりないんです。
なのに、お葬式までに決めなくてはいけないことが山ほどあります。そのため、1つずつ内容を確認しながらじっくりと考えるヒマがなく、時間に追われ慌てて決めてしまう人が非常に多いんですよね。
それで、後になって「あぁ、もっとよく考えて決めればよかった・・・。」と悔やむ結果となります。
人によっては「葬儀社の人に急かされて、不要なものまで入れられた!」と文句を言います。
一方で、生前葬であれば式までに十分な時間があるので、自分がやりたい内容についてじっくりと考えたり、1つずつ丁寧に比較検討することができるので後悔をすることがほとんどありません。
時間に追われずに考えられるという点は、後悔のない式をする上でメリットになります。
家族にかけるお葬式費用の負担を軽減できる
生前葬は、家族にかけるお葬式費用の負担を軽減できることがメリットです。
生前葬をした場合、実際に本人が亡くなったときは『参列者なしでの家族葬』または『直葬』のような簡易的なお葬式で済ませます。
生前葬を執り行ったことで社会的なお別れをしているので、簡易的なお葬式でも問題がないのです。
簡易的なお葬式であれば費用も安いため、残された家族にかけるお葬式費用の負担を軽減できます。
生前葬をすることで存命中に本人自身が葬儀費用の大部分を負担してくれるわけですから、家族にとっては《実際に亡くなったときの葬儀費用》が大幅に減るので安心です。
仏壇やお墓などについて考える機会ができる
生前葬について考えていると、自然にその先のことも考えるようになります。
実際に自分が死んでしまった後に何が必要なのかを考えると、おそらく【仏壇】と【お墓】というワードが出てくるでしょう。
どちらもまだ無いなら、今から準備をしておくこともできます。
特に『お墓の費用』は大きいので、本人が存命中に建ててしまうのもいいと思いますよ。
仏壇については家の間取りの都合などがあるでしょうから、そこまで急いで用意する必要はありません。
仏壇やお墓のことなんて普段はあまり考えませんが、生前葬をきっかけに真剣に考える機会ができるのはメリットといえます。
生前葬のデメリット
続いて生前葬のデメリットについて紹介します。
生前葬のデメリットは、
- 生前葬に対する理解を得られない
- 自分本位な内容になりやすい
- 結局はお葬式をするケースが多い
ということです。
生前葬に対する理解を得られない
生前葬の最大のデメリットは生前葬に対する理解を得られないということです。
生前葬は少しずつ認知されてきましたが、それでもまだ多くの人は生前葬のことを知りません。
しかも、本人が生きているのにお葬式をするわけですから、招待された人はきっと困惑します。
特に、年配の方々からは「生きているのにお葬式をするなんて、そんな不謹慎なものに出席したくない。」と言われてしまうかもしれません。
そのような人には、生前葬がどのようなものか、そして生前葬を選んだ理由をちゃんと説明しましょう。
自分本位な内容になりやすい
生前葬は『自分本位な内容になりやすい』ことがデメリットの1つです。
生前葬の内容は主催者が自由に決められます。
生前葬のプログラムを決めるにあたり、主催者は「アレもやりたいし、コレも外せない。」と、自分の希望を組み込んでいきます。
しかし、内容を自由に決められるせいで、どうしても自分本位なプログラムになりがちです。
主催者自身が決めるのですから自分本位な内容になって当然なのですが、度が過ぎると列席者に不快感を与えてしまいます。
そのため、自由に決められるとはいえ、ある程度は制限されてしまい「なんか思っていたのと違うなぁ。」ということもあるんです。
結局はお葬式をするケースが多い
生前葬には『結局はお葬式をするケースが多い』というデメリットがあります。
生前葬というのは、一般的なお葬式を前倒しで行うようなものなので、いずれ主催者が亡くなったときには火葬だけをすればいいわけです。
しかし、生前葬をしたとはいえ、残された家族としては【何もしない】ことに抵抗があり、多くの場合「せめて身内だけで家族葬くらいはしよう。」という流れになります。
でも、家族葬とはいえ費用は50万円~100万円くらいしますので、それなりに大きな出費です。
あとは、菩提寺に生前葬を認めてもらえず、お葬式をせざるを得ないということもよくあります。
お寺にお墓を持っている場合は、そのお寺が『菩提寺』となり、お墓を持っている家は『檀家』という立場になります。
そして、檀家は家族が亡くなったら菩提寺にお葬式を依頼しなくてはいけないんです。
さらに、菩提寺があると、亡くなった人へ『戒名』を付けることが必須となるケースが多く、そのときは戒名料も納めなくてはいけません。
このように、主催者としては家族にお葬式の負担をかけたくないから生前葬をしたのに、結局はお葬式をすることになってしまうケースが多いんですよね。
生前葬の費用の相場
生前葬には決まった形式がなく内容も自由ですから、行われる内容によって費用が大きく変わります。
とはいえ、費用についてだいたいの相場くらいは知っておきたいですよね。
生前葬の費用の相場は、
- 主催者側の費用:30万円~150万円
- 招待される側の費用:1万円
となっています。
主催者側の費用の相場
生前葬は、執り行う内容と招待する人数によって費用は大きく変わります。
具体的には、
- 会場使用料
- 飲食費
- 返礼品の有無
- 演出料や機材の料金
などによって必要な費用が異なります。
例えば、レストランを借り切って列席者が10名程度、そして会食中心なら必要な費用は30万円くらいでしょう。
また、葬儀社やホテルの式場を借り、同じく10名程度で会食をするという内容なら50万円くらい。
しかし、ちゃんと式のプログラムを組んでいろんな催しを行い、披露する映像や画像の製作をプロに依頼した場合は100万円を超えてしまう可能性もあります。
そして、人数が増えて30名程度になると、スペースの問題から葬儀社やホテルの式場を借りる必要があり、会食中心の内容であっても100万円くらい必要です。
さらに、プロに映像や画像の製作を依頼するだけでなく、式中の音楽もプロの演奏家に依頼をしたり、列席者への配布物があったりすると費用はもっと増えて150万円くらいかかります。
生前葬は、お葬式を前倒しで行うようなものですから、費用もそれなりに大きくなってしまうことをあらかじめご了承ください。
招待を受けた側の費用の相場
生前葬をする場合、列席者は【会費】を持って行きます。
お葬式では【御香典】ですが、生前葬では【会費】になりますのでご注意ください。
また、ときどき会費と御香典の両方を持って行く人がいますが、どちらか1つでかまいません。
多くの人は生前葬についてまだよく知らないので、主催者は招待状の中で会費について明記しておくことが大事です。
そのために、主催者は会費をいくらに設定するかを決めなくてはいけませんが、ある程度は相場に合わせて設定した方が無難です。
生前葬での会費の相場は『1万円』くらいですから、これよりも高くなりすぎないようにしましょう。
ちなみに、人によっては【会費なし】で生前葬をするケースもあります。
その場合は、招待状に会費が不要であることを明記しておきましょう。
現在のところ、生前葬をする人はごく少数であるため、とにかく前例が少ないです。
そのため、列席者としては何をどうすればいいのかわからず困惑しますので、主催者がしっかりとルールを決め、事前に通知しておくようにしましょう。
生前葬は出家と似ている
生前葬には、
- 今のうちに自分自身で社会的な区切りをつける。
- 友人や知人にちゃんと自分の口から感謝の気持ちを伝えておく。
- 家族に『お葬式費用の負担』をかけないようにする。
という目的があります。
僕が初めて『生前葬』というものを知ったとき、【出家】に似ていると思いました。
出家というのは、いろんな人たちのおかげで今の自分があることに感謝し、あえて俗世(社会)から離れて仏道に入ることで、自分と社会に区切りをつけることです。
また、ずっと昔は、貧しい生活をしている家では家計の負担を軽くする目的で、家族の誰か(子供であることが多い)を出家させて、お寺で面倒をみてもらうことも多かったのです。
生前葬は、今までお付き合いのあった人たちに感謝の気持ちを表し、自分の口で御礼を言い、そして自分で社会的な区切りをつけるので、出家と似ています。
それに、家族に経済的な負担をかけないようにする点においても出家と似ているんですよね。
もちろん、生前葬と出家は似て非なるものですが、自分自身を社会から切り離すというところは共通しています。
まとめ
生前葬は、自分が生きている間に自分自身のお葬式をすることです。
生前葬には、
- 今のうちに自分自身で社会的な区切りをつける。
- 友人や知人にちゃんと自分の口から感謝の気持ちを伝えておく。
- 家族に『お葬式費用の負担』をかけないようにする。
という目的があります。
生前葬をするには、
- 家族の了承を得る。
- 生前葬のだいたいの内容を決めておく。
- 生前葬を依頼する業者(葬儀社やホテル)を選ぶ。
- 現地を見学する。
- 日程と会場を決める。
- 招待する人を選んで人数を決める。
- 招待する人へ連絡をする。
- 執り行う内容を決めて手配をし始める。
- 列席者が決まったら最終的な手配をする。
といった手順を踏むのが一般的です。
そして、生前葬の内容は、
項目 | 内容 |
開式の言葉 | 司会者による進行 |
主催者の挨拶 | 列席者へこれまでの感謝とお礼の気持ちを伝える |
主催者のこれまでの人生や経歴の紹介 | 作成しておいた主催者の生涯に関する映像や画像を放映 |
来賓の挨拶 | 来賓の方を招いた場合はご挨拶を頂く |
会食・歓談 | 列席者のテーブルを順番に回って話をしていく |
列席者からの言葉 | 親戚・友人などの中から代表で1名にご挨拶を頂く |
余興 | 友人などによる余興 |
閉式の言葉 | 司会者により会が締められる |
というように、お葬式というよりもパーティーの要素が強く、和やかな雰囲気の中で行われます。
生前葬のメリットは、
- 自分自身で気持ちを伝えることができる
- 執り行う内容は自由
- 式までに十分な時間がある
- 家族にかけるお葬式費用の負担を軽減できる
- 仏壇やお墓について考える機会ができる
ということです。
一方で、
- 生前葬に対する理解を得られない
- 自分本位な内容になりやすい
- 結局はお葬式をするケースが多い
というデメリットがあります。
生前葬は多くの人にまだ認知されていないので、まずは、あなた自身が生前葬について理解しておき、それを招待する人へしっかりと説明できるようにしておきましょう。