
自分の戒名は自分自身でつけたい・・・。



そのように思う人はとても多いですよ。
仏式でお葬式をする場合、故人の戒名は僧侶(お坊さん)がつけています。
でも、じつは、自分の戒名は自分自身でつけられるんです。
戒名には決められた構造や注意点があり、それを守っていれば誰でもつけられます。
本記事を参考にして、納得のいく【自分の戒名】を自分自身でつけてください。
- 戒名を自分でつけてもよい理由が分かります。
- 戒名のつけ方や注意点が分かります。
この記事を書いている私『ちょっき』は僧侶になって25年です。僧侶としての経験や視点をふまえて海洋散骨に関する情報を発信しています。
戒名は自分でつけてもいい
仏式でお葬式をする場合、基本的にはお坊さんが故人の【戒名】をつけます。
でも、自分の戒名なんだから自分自身でつけたいと思いますよね?
じつは、戒名は自分でつけてもいいんです。
あなたが自分自身で『自分の戒名』を決めることができますし、なんなら『あなたの家族の戒名』をつけることもできますよ。
戒名というのは【仏弟子として戒律を守る者の名前】という意味です。
戒名は『名前』なのですから、それを誰がつけようと自由なんですよね。
あなたのお子様の名前は誰がつけましたか?
きっと、夫婦でいろいろと調べて、たくさん話し合いをして、それでようやくお子様の名前が決まったことでしょう。
その名前には『さまざまな想い』が込められているはずで、そんな大事な『名前』を他人につけてもらうことはしませんよね。
戒名も同じです。
自分の名前(戒名)を家族でもない他人に決められるのは嫌ではないですか?
だったら、あなたの戒名はあなた自身でつければいいんです。
ただし、戒名をつけるときには『戒名のつけ方』がありますので、それは守るべきでしょう。
自分で戒名をつけるなら、戒名の構造や意味をしっかりと理解してからでないと、後代に【恥ずかしい戒名】を残すことになります。
ですから、自分の戒名は『何となく感覚でつける』のではなく『じっくりと考えてつける』ようにしてください。
戒名って何?
戒名をつけるには、根本的な『戒名とは何なのか?』を知る必要があります。
先ほど少し言いましたが、戒名というのは【仏弟子として戒律を守る者の名前】のことです。
『仏弟子』というのは、たくさんの仏様に守られながら修行する者のことです。
そして、『戒律』というのは、修行するときに守るべき約束事のことをいいます。
ですから、戒名をつけるということは、仏教の信者になって修行をするということです。
一般的なお葬式では、【故人を仏弟子にする】ためにお坊さんがいろんな作法をしており、その際に「今後の名前はコレですよ。」と故人に戒名を授けます。
あなたが自分で戒名を考えた場合は、あなたのお葬式のときに《自分で考えた戒名》を授けてもらうことになります。
ですから、それなりに戒名として成立しているものでないと、作法をしているお坊さんに「何だか無茶苦茶な戒名だな。」と思われてしまいます。
戒名をつける場合の注意点
あなたの戒名は、あなた自身でつけることができます。
でも、全部あなたの好きなようにできるわけではないので注意してください。
思わぬトラブルを招かないように、注意点を理解してから戒名をつけましょう。
菩提寺があるなら、必ず住職の許可を得る
あなたの家のお墓はどこにありますか?
この質問に対する返答の多くは、
- お寺
- 霊園
- まだお墓は無い
のどれかでしょう。
この中で、②と③に該当する場合は、次の『戒名料が減るとは限らない』の項目まで読み飛ばしてください。
しかし、『①お寺』を選んだあなたは、ここからの内容をよく読んでおいてください。
あなたの家のお墓が『お寺』にあるということは、あなたにとってそのお寺は【菩提寺(ぼだいじ)】となります。
そして、そのお寺(菩提寺)にとってあなたの家は、【檀家(だんか)】という存在になります。
菩提寺は《檀家の仏事のすべてを担当する立場》にあり、檀家は《お寺を支えていく立場》です。
そして、あなたの家のお墓がお寺にあるということは、あなたの家とお寺がお互いに【檀家と菩提寺の関係になる】と約束した証拠です。
だから、あなたの家のお葬式や法事は、すべて『菩提寺の住職』が行います。
そうなると、あなたの家族の戒名は『菩提寺の住職』がつけることになります。
そして、その『菩提寺の住職』がするべき仕事を『あなた』がするのであれば、ちゃんと許可を得ておかないとマズいです。
ということで、自分で戒名をつけるのなら必ず住職の許可を得ることは忘れないでください。
ちなみに、あなたが自分で戒名をつけることを菩提寺の住職が許可してくれるかどうかはわかりません。
住職によっては、「戒名はちゃんと修行をしたお坊さんだけがつけられるものだ!」という考えの人も多いんですよね。
だからといって、許可を得ないまま「自分の戒名は自分自身でつけました」なんて言ったら、菩提寺とかなりモメることになりますし、その後のお寺との関係悪化は必至です。
下手をすると、菩提寺にあるあなたのお墓を使用できなくなる可能性まで出てきてしまいます。
許可をしてもらえるかどうかは別として、菩提寺の住職へ事前にあなたの意思を伝えておくことだけは忘れないでください。
戒名料が減るとは限らない
戒名を自分でつけるとなった場合、もしかすると、
「自分で戒名をつけるのだから、お葬式のときは【戒名料】を納めなくてもいいな。」
と思うかもしれませんね。
でも、【戒名料】というのは、お坊さんが戒名を考える『作業費用』ではありません。
戒名料は、お坊さんに対して『仏の道へ導いてくれることへの感謝の気持ちを表すため』に納めるものです。
ですから、あなたの戒名をお坊さんがつけようが、あなた自身でつけようが、それによって戒名料が変わるということはないでしょう。
とはいえ、戒名料などの【お布施】については、お坊さんによって考え方がまったく違うので何とも言えませんけどね。
もしかすると戒名料を差し引くというお寺もあるかもしれませんが、その可能性はかなり低い。
もしも「戒名を自分でつけておけば、お葬式のお布施が安くなる。」と思っていたなら、その考えは改めた方が無難です。
あなたの家族の戒名をつける
あなたが自分の戒名だけではなく、あなたの家族の戒名をつけることも可能です。
注意すべき点や次の章から解説する『戒名のつけ方』は、あなたが自分で戒名をつける場合とまったく同じです。
家族でしっかりと話し合い、菩提寺の住職にちゃんと伝えた上で、あなたの家族の戒名をつけてください。
戒名のつけ方
戒名といえば『漢字が何個か並んでいる』というイメージですよね?
戒名に使われている漢字は【何となく適当に選ばれた漢字】ではありません。
戒名には決まった【構造】があり、また各部分ごとに意味が決められています。
自分で戒名をつけるには、これらをちゃんと理解しておかないと後代に渡り恥をかくことになります。
戒名の各部分の意味をしっかりと考えながら、あなたらしい戒名をつけてくださいね。
戒名で使用してはいけない漢字
戒名をつけるにあたり【使用してはいけない漢字】があります。
戒名に使用する漢字は、【動物】を連想させるような字を避けるという決まりがあるんです。
例えば、飼っているペットを本当に愛しているからといって、戒名に【犬】とか【猫】などの漢字を使用してはいけません。
仏教では、動物のこと『人間よりも下位の世界に生きる存在』と考えているため、それを戒名につけるのは不適切だということなんです。
動物を愛する人が聞いたら怒ると思いますが、仏教ではそのように人と動物を明確に区別しています。
また、明らかに【負】を連想させるような漢字は避ける方がいいですよ。
これは特に『決まり』というわけではありませんが、あなたは自分の子どもの名前に【悪】とか【苦】なんていう漢字は使いませんよね?
戒名も《名前》なので、明らかに【負】を連想させる漢字を入れるのはヤメましょう。
戒名の構造とそれぞれの意味
戒名には決められた構造があります。
各部分ごとに漢字を決めていき、最後にすべてを合わせる、というように戒名をつけます。
戒名の基本的な構造は、
- 院号(いんごう)
- 道号(どうごう)
- 戒名(かいみょう)
- 位号(いごう)
という【4部構成】になっています。
例えば、『〇〇院▲▲□□居士』という戒名があったとします。
この場合、
- 『〇〇院』の部分が院号
- 『▲▲』の部分が道号
- 『□□』の部分が戒名
- 『居士』の部分が位号
となります。
それぞれの意味を理解してから漢字を決めていきましょう。
院号
まずは『院号(いんごう)』の部分です。
この院号の部分は【上位の戒名】だけにつけられます。
上位の戒名とは、ものすごく正直に言うと『お金をたくさん納めてくれた人につけられる戒名』ということです。
戒名の位は『お寺に対する貢献度』によって決まることがほとんど。
つまり、お寺としては『今まで他の檀家さんよりも多くお布施を出してくださった方』に対しては【上位の戒名】をつけることで感謝の気持ちを表すのです。
ですから、もしも今までお寺に対して何の貢献もしてくれなかった人が急に「自分の戒名には院号をつけたい」と言っても、本来であれば院号がつくことはありません。
これを聞いて不愉快に思われたかもしれませんが、現実として戒名はそういう基準でつけられるものなんですよね。
とはいえ、本来は院号なんてそう簡単につけられるような戒名ではありません。
院号の『院』というのは、【お寺】や【お堂】などを意味します。
つまり、本来の院号は『お寺やお堂を建ててしまうくらい、多くのお布施や寄付を納めて、なおかつ深い信仰心がある人』を意味する戒名なんですよね。
しかし、日本が戦争をしていた頃は、国のために尊い命を落とした人々に対して『院号』の戒名がつけられました。
これによって、本来ならほとんどつけられない『院号』の戒名が、多くの人々に授けられるようになったんです。
それ以来、『院号』は限られたごく一部の人だけの戒名ではなくなりました。
あなたがもしも『院号』をつけたいのなら、【院号はとても重い意味のあるもの】だということを十分に理解しておいてください。
道号
続いて『道号(どうごう)』の部分です。
道号の部分は、戒名を付ける人の、
- 人柄
- 好きなモノ(趣味など)
- 仕事
といったように『その人を連想させる部分』となります。
そして、『院号』をつけない戒名である場合は、この道号から戒名が始まりますので大事な部分となります。
戒名を見ただけで誰の戒名なのかが分かるなら、それは【優れた戒名】です。
なので、道号の漢字を決めるときには「自分ってどういう人間なんだろう?」ということを考えてください。
これを機会に、家族や友人に『自分が他人からどう見えているか』を聞いてみてはどうでしょう?
そうすることで、自分以外の客観的な目線で考えられた【優れた戒名】になると思いますよ。
戒名【※ここが一番重要な部分です!】
続いて『戒名』の部分です。
もしかして「あれっ?戒名の中にさらに戒名があるの?」って思いましたか?
一般的に戒名と呼ばれるものは、院号から位号までを合わせた全体のことを言っています。
しかし、本来の『戒名』はこの二文字をいうのです。
そして、戒名全体においてこの二文字が最重要の部分となります。
戒名の二文字を決めるときに大事なのは、仏の道を歩むことで自分がどうなりたいのかを漢字で表現するということです。
自分で戒名をつけるときには、ここを最も意識してほしいなと思います。ここがしっかりと伝わる漢字が使われていれば、とりあえず戒名としては成立します。
また、戒名には現在の名前から漢字を一文字入れることができるので、これにより誰の戒名なのかが分かりやすくなります。
ですから、戒名全体を考えるときは最重要となる『戒名』の部分から先に漢字を決めるようにしましょう。
位号
最後に『位号』の部分です。
位号には大まかに分けると次のような『位』があります。
男性の場合は、
- 院居士
- 居士
- 信士
があります。
女性の場合は、
- 院大姉
- 大姉
- 信女
があります。
これらの位号は、男女ともに①から順に上位の戒名となっています。
そして、どの位号で戒名をつけるかによって、お寺へ納める戒名料が変わるのです。
そうすると、男女ともに①が最も上位の戒名なので、お寺へ納める金額も一番高額となるわけです。
さて、ここで1つ注意点があります。
あなたの家のご先祖様にはどんな戒名がついていますか?
戒名をつける際には、他の仏様と位号を合わせる、というのが一般的です。
特に【夫婦】の場合は気をつけてください。
例えば、
すでに他界した夫に『②居士』がついていたら、妻にも『②大姉』をつける
みたいな具合で《位を合わせる》のです。
ですから、すでに他界した夫に③の『信士』がついているのに妻には①の『院大姉』をつける、というような夫婦間で【大きな位の格差】が生まれないようにしましょう。
まとめ
戒名は、お坊さんに頼まずに、あなたが【自分自身】でつけることができます。
ただし、あなたに菩提寺がある場合は、必ず住職の許可を得てください。
これをしないと、かなりモメますし、下手をすればそのお寺にあるお墓を使用できなくなってしまいます。
お寺にお墓がない場合は、そのような『縛り』はありませんから、あなたの自由に戒名をつけられます。
自分で戒名をつけるときは【ただ好きな『漢字』を並べる】のではなく、
- 院号:お寺への貢献が多い人だけにつけられる部分
- 道号:人柄・好きなモノ・職業など、その人を連想させる部分
- 戒名:その人が、仏弟子としてあるべき姿・早く悟りを開けるように願う、という部分
- 位号:戒名の『位』を表す部分
といったような構造と、それぞれの意味をよく考えましょう。
戒名は【仏弟子として修行をする立場になった者の名前】です。
だから、あなたが自分の戒名をつけるということは、誰からも強要されることなく、あなたが自分自身で【仏の道を歩む決意】をした、ということを意味します。
自分の戒名はあなた自身でつけても大丈夫ですが、それなりに自分の行動に責任を持って戒名をつけるようにしてくださいね。
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