- 故人の遺骨を引き取りたくない
- 事情があって故人の遺骨を引き取ることができない
- 『ゼロ葬』について知りたい
近年ではお葬式の規模が小さくなっていることもあり、それにともない葬送形態も変化しています。
例えば、
- 家族葬:故人と近い関係の人達だけで行う
- 一日葬:通夜をせずにお葬式だけを行う
- 直葬:お葬式さえも行わない
など、以前にはなかった葬送形態が増えました。
そして、これらよりもさらに新しい葬送形態が誕生しています、その名も『ゼロ葬』です。
ゼロ葬とは、お葬式をしないだけではなく、火葬後の収骨をせず、故人の遺骨を引き取らないという、なんとも驚きの葬送形態です。
『ゼロ葬』は本当に何もしないので、安易に決めてしまわず、後悔のないよう慎重に考える必要があります。
この記事では、
- 『ゼロ葬』とは何か
- 『ゼロ葬』が選ばれる理由
- 『ゼロ葬』のメリットとデメリット
について書いています。
新しい【お葬式のカタチ】として参考にしてみてください。
『ゼロ葬』って何?
『ゼロ葬』はとてもインパクトの大きい葬送形態です。
『ゼロ葬』の【ゼロ】は数字の【0】のことなので、
- お葬式が無い
- 収骨が無い
- その後の供養が無い
- 故人のための【お墓】が必要ない
ということなんですよね。
ちなみに、この『ゼロ葬』という名前は、宗教学者の島田裕巳氏の著書である《0葬ーあっさり死ぬ》(2014年出版)が元になっています。
現在のところ、ゼロ葬を選んでいるのはやむを得ない事情で遺骨を引き取ることができない人です。
仕方なく『収骨拒否』をするわけですね。
西日本では、遺骨の一部だけを持って帰る【部分収骨】という文化がありますが、ゼロ葬の場合は一部さえも持って帰らず全面的に収骨拒否をします。
本当に何もしないので、言ってみれば【究極に簡略化された葬送形態】です。というか、もはや『葬送』でさえないかもしれません。
じつは、僧侶の私も『ゼロ葬』を知りませんでしたから、世間の人にはまだ認知されていないと思います。
しかも、【あえて遺骨を引き取らない】という今までにないような形態ですから、きっと一部の人からは非難されるでしょう。
また、後述しますが『ゼロ葬』はどこの火葬場でもできるわけではないんですよね。
火葬場の規則は各自治体によって違うので、いざというときになって「ウチではできませんよ。」と断られてしまうかもしれません。
ですから、どうしても遺骨を引き取ることができないのなら、事前に『収骨拒否』ができる火葬場を探しておきましょう。
『ゼロ葬』を選ぶ理由
人によっては、事情があってどうしても遺骨を引き取ることができず『ゼロ葬』を選んでいます。
ここからは『ゼロ葬』を選ぶ具体的な理由を紹介していきます。
故人と絶縁していた
ゼロ葬を選ぶ理由として、生前に『故人と絶縁していた』というケースがあります。
私たちは、人間関係においてどうしてもお互いに理解し合うことができず、その結果『関係を断つ』ということがありますよね。
これは、相手が友人や知人の場合はもちろん、夫婦や親戚同士、さらには親子であっても起こりうることです。
もしも、あなたと絶縁していた人が亡くなった場合、故人にとってあなた以外に誰も身寄りがいなければ、あなたの所へ連絡がきます。
しかし、連絡を受けた側としては、仕方なく火葬に立ち会ったとしても、その後のことまでは面倒を見たくないでしょう。
その結果、ゼロ葬を選択することになるんですよね。
離婚した相手が孤独死をした
ゼロ葬を選ぶ理由には、『離婚した相手が孤独死をした』というケースがあります。
先ほども言いましたが、人との関係を断つというのは夫婦関係においても起こります。
要するに【離婚】です。
離婚をすれば、法的に相手の人とはもう他人です。
しかし、離婚した相手がその後も独身のままで孤独死をした場合、その人にまったく身寄りがいなければ、最終的にはあなたの所に連絡が来る可能性があります。
本当ならばもう【赤の他人】なので何の関係もないのですが、「最後くらいは・・・。」と火葬の立ち会いだけをする人もいます。
でも、そういう人もさすがに遺骨までは引き取れないんですよね。
その結果、『ゼロ葬』を選ぶことになります。
ほぼ面識がないような遠い親戚である
故人が『ほぼ面識がないような遠い親戚である』というケースではゼロ葬が選ばれることが多いです。
亡くなった人に【関係が近い身寄りの人】がいなければ、さらに身寄りの範囲を広げて探すことになります。
そうすると、会った記憶もないような親戚でも、巡りめぐってあなたの所へ連絡が来ることがあります。
あとはもう同じです。
仕方なく火葬には立ち会いますが、その後のことまで面倒を見ることができず、遺骨を引き取ることはしないのです。
それで、結果として『ゼロ葬』を選ぶことになります。
故人の遺骨を納める場所がない
ゼロ葬を選ぶのは『故人の遺骨を納める場所がない』という理由であることも多いです。
遺骨を引き取ったら基本的には遺骨をお墓へ納骨します。
しかし、遺骨を引き取った人がお墓を持っていなければ、お骨の行き先がありません。
最近では『手元供養(自宅に遺骨を置いておく)』という供養方法もありますが、もしも《生前の付き合いがほとんどない人》の遺骨だった場合は、正直なところ家に置いておきたくないですよね?
だからといって、わざわざその人のためだけにお墓を建てるなんてことはしないでしょう。
お墓を建てるには大金が必要ですし、その後お墓を守る人がいなければすぐに【無縁墓】になってしまいます。
ならば、どこかの納骨施設に預ければいい・・・といっても、それだって大きな初期費用と維持費が必要です。
そのため、残酷なようですが「ほとんど付き合いのなかった人にそこまでのことをする義理はない」と思うのが普通です。
それで、『ゼロ葬』を選ぶという結果になります。
故人の強い遺志
ゼロ葬を選ぶ理由として『故人の強い遺志』というケースもあります。
生前のうちから「自分の遺骨はぜひ◯◯にしてほしい。」というような希望を家族に伝えている人は多いです。
その中には、家族に迷惑をかけたくないという心理から、「自分の遺骨はお墓には入れずに全部処分してほしい」と希望する人もいます。
とはいえ、それが本心ではなく言っている場合と、本心で言っている場合があるんですよね。
ほとんどの人は本心ではないですが、まれに本心で言っている人もいます。
そのような場合、家族としてはお墓に納骨したいという気持ちがあっても、よく話し合って『ゼロ葬』を選ぶこともあります。
『ゼロ葬』のメリットとデメリット
『ゼロ葬』は多くの人にとってまだ馴染みがないので、そのメリットやデメリットについても認知されていません。
ゼロ葬を検討するにあたり、メリットとデメリットをしっかり確認しておきましょう。
『ゼロ葬』のメリット
『ゼロ葬』をすることのメリットは、
- 費用を大幅に抑えられる
- 時間を取られない
ということです。
費用を大幅に抑えられる
ゼロ葬の大きなメリットは、費用を大幅に抑えられるということです。
ゼロ葬は、必要最低限のこと以外は何もしないので、
- お葬式
- お墓
- その後の供養
これらの費用がありません。
そのため、《お葬式⇒供養》という一般的な流れに比べると費用を大幅に抑えられます。
とりあえず、ゼロ葬の費用だけは必要ですが、それでも【10万円~20万円】くらいなので、一般的なお葬式や供養をするのに比べればずっと安いです。
というか、費用があまりかからないからこそ、遺骨を引き取ることはしなくても、火葬だけはできるのでしょうね。
時間を取られない
ゼロ葬をすれば、時間を取られないというメリットもあります。
一般的なお葬式をする場合、いろんな【打ち合わせの時間】とか【法要や食事を行う時間】が必要になります。
しかし、『ゼロ葬』は必要最低限の打ち合わせだけで、法要や食事に関する打ち合わせがありません。
ですから、一般的なお葬式に比べて時間を取られないんですよね。
必要最低限の打ち合わせをして、火葬場まで付き添って、故人が火葬炉へ納められるのを見届けるだけ。
費用もさほどかからず時間もあまり取られないので、遺骨を引き取ることはしなくても、火葬だけはできるのでしょうね。
『ゼロ葬』のデメリット
続いて『ゼロ葬』のデメリットについて紹介します。
デメリットとしては、
- 一部の人から非難される
- 後になって遺骨を引き取ることはできない
ということが挙げられます。
一部の人から非難される
ゼロ葬をしようとすると、一部の人から非難されることが十分に考えられ、これがデメリットになります。
ゼロ葬をする際には、家族や親戚との話し合いをしておくことが大事です。
しかし、故人に近い親戚との話し合いはできても、すべての親戚との話し合いはできませんよね。
そして、ゼロ葬はまだまだ認知度は低いです。
そのため、遠い親戚など一部の人から非難されることが十分に考えられます。
やはり、【遺骨を引き取らない】というのは、まだ世間の理解が少ない方法なので、人によっては『ありえない選択肢』なんですよね。
なので、ゼロ葬を選ぶなら、一部の人から非難されることは覚悟し、それに対する説明ができるようにしておく必要があります。
後になって遺骨を引き取ることができない
ゼロ葬は、後になって遺骨を引き取ることができないというのが大きなデメリットです。
引き取る人がいない遺骨はしかるべき場所へ納骨されてしまい、もう二度と戻って来ません。
そのため、後になってからどんなに火葬場に頼んでも遺骨を引き取ることはできません。
ゼロ葬は絶対にあなた1人だけで決めずに、必ず家族や故人に違い親戚と話し合ってから決めるようにしましょう。
原則として収骨拒否はできない
先ほども言いましたが、すべての火葬場で収骨拒否ができるわけではありません。
というか、ほとんどの火葬場では原則として収骨拒否はできないので注意してください。
火葬に関することは、各自治体の条例や火葬場の規則によって違うので、まずは収骨拒否ができる火葬場を探す必要があります。
それで、もしも近くの火葬場で収骨拒否ができなければ、遺体を他の市町村の火葬場まで移送することになります。
ただ、火葬場というのは基本的に『市民のための施設』ですから、他の市町村から移送されてきた遺体を火葬する場合は使用料金が一気に高くなるんですよね。
それに、他から移送されてくる場合は、希望する時間帯では火葬をしてもらえないケースもあります。
また、他の市町村の火葬場まで遺体を移送するとなると、移送の距離が増えてしまい、その分だけ葬儀社へ支払う移送料金も増えます。
『ゼロ葬』は一般的なお葬式に比べればずっと安くすむのですが、それでもある程度の出費が必要となるのでご注意ください。
収骨拒否ができない場合は海洋散骨をしよう
火葬場では原則として収骨拒否はできません。
どこの火葬場でも収骨拒否ができなかった場合は、後日に『海洋散骨』をするというのも1つの方法です。
収骨拒否ができない以上は、とりあえず遺骨を受け取り、その後に何らかの対処をするしかありません。
しかし、受け取った遺骨をお墓へ納骨したり、どこかの納骨施設へ預けたりすることはできませんよね。
それなら、海洋散骨をしましょう。
海洋散骨であれば、どこかで遺骨を保管することがなく、維持費などもかかりません。
もちろん、海洋散骨の費用はかかりますが、お墓や納骨施設へ納骨するよりもずっと安くすみます。
まとめ
葬送形態はここ20年くらいで劇的に変化しました。
現在ではどんどん簡略化が進み、規模の小さなお葬式をするのが一般的になりつつあります。
そんな中で、『火葬後に収骨をせず、故人の遺骨を引き取らない』という究極に簡略化をした葬送形態である【ゼロ葬】が誕生しました。
ゼロ葬は、あまりにインパクトが大きすぎて、まだ多くの人には受け入れられていません。
『ゼロ葬』は最新の葬送形態なので、家族や知人など必ず誰かと相談をしてから、後悔のないよう慎重に考えて選ぶようにしましょう。
また、収骨拒否ができなかった場合は『海洋散骨』をするという方法もありますので検討をしてみてください。
※海洋散骨をすれば遺骨の管理が不要です。